「まるで父と娘。クラシックは不滅。しかし、若くても素晴らしいものを創造することはできる。」マイ・インターン スモーキー石井さんの映画レビュー(感想・評価)
まるで父と娘。クラシックは不滅。しかし、若くても素晴らしいものを創造することはできる。
舞台はニューヨーク・ブルックリン。
本作は定年を過ぎ、妻にも先立たれ、一人やもめながらも悠々自適に老後生活を謳歌するもどこか物足りなさを感じている主人公ベンが
スーパーで目にしたシニア向けの求人案内をみて、「インターン」として仕事に復帰するところから始まる。
しかしながら、その職場はアパレルのeコマースを運営する会社。
本作のもう一人の主人公で若きママさん起業家ジュールズが自身の洋服のレビューがネットユーザーにウケたことがきっかけで、瞬く間に従業員数200人規模の企業へと成長させたという設定だ。
定年まで電話帳会社で勤め上げ、営業畑から管理職まで上り詰めたシニア世代でお節介な実直系「仕事人間」ベン。
そして、社長業の傍ら勉強の為カスタマーセンターの対応を手伝ったり、工場に出向いて職員に包装の仕方をレクチャーしたりと自分のこだわりを重んじ、日々忙しく動き回る現役世代で大雑把なカリスマ系「仕事人間」ジュールズ。
互いに世代も性別もそして性格も異なるふたり。
後に「みんなのいいおじさん」となり頼りにされていくベンはジュールズに時に邪険にされながらも「とっ散らかった」職場環境を「整頓」し始め、「インターン」ながら、さしずめ一身にして二生を経るがごとく職業人として再び邁進していく。
一方で、冒頭から「みんなを振り回す気分屋若手社長」ジュールズは直面していた会社経営と家庭生活の問題や葛藤を前述のベンの活躍と支えによって一歩ずつクリアしていき、女性として職業人としての幸せを「確かなもの」にしていく。
感想としては、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイがとにかくおしゃれでかっこいい。
とりわけ、主人公ベンを演じるロバート・デニーロの紳士然としたライフスタイルや佇まい、そして確かな観察力・物腰の柔らかさ、そして思慮深さの中に潜む筋の通った頑固さがまた素晴らしかった。
ああいう歳の取り方をしたいと感じたし、また歳をとって、体に多少ガタが来てもなおタフさと品格は失いたくないと感じた。
もちろん、そんな思い通りにかっこいいシニアになれるはずはないだろうし、そんなものにこだわりや憧れを抱く時点でそれは「我執」に他ならないのだが。
最後に、すべての人がきれいにかっこよく生き、望む「結末」が手に入るわけではない。
むしろ私の知るところでは誰一人そんな人間はいないのではないか?と考える。
しかしながら、本作は「葛藤」と日々戦っている老若男女すべての人に見て頂いてほしいと感じた。きっと少なからず得られるものはあるはずなので。