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主人公は,生物の眼球の進化の起源を研究している。
邦題は「アイ・オリジンズ」なので,「眼(EYE)」の「起源(ORIGIN)」を探る物語か,と思い視聴開始。
ところがタイトルロールで原題が表示されると「I ORIGINS」とある。つまりこれは「EYE」の起源と「I」の起源,2つを同時に探る物語なのか,と見当がつく(ダブルミーニング)
では「私の起源」とは?
主人公はパーティで出会った,美しい瞳(虹彩)を持つ女性と恋に落ちる。
主人公は科学者で,「神」「魂」「前世」などに否定的。それと対比されるようにして,ヒロインは科学的思考によって排除されがちな概念(超自然的なもの)に肯定的。
主人公は眼の進化の起源を探るため,目(視覚)を持たないミミズに目を発生させる研究をするのだが,それを見たヒロインは「五感のうち,嗅覚と触覚しか持たないミミズが視覚を獲得するように,五感しか持たない人間が,第6感を獲得することもあるのでは?」と指摘。主人公は返答に詰まる。
ラブラブな主人公とヒロイン。「私たちは前世で一緒だったのよ」「死んだら火葬にして」などという会話が飛び出してくるあたりで「ああ,この物語は生まれ変わりの物語なんだ」と見当がつき,タイトル「I ORIGINS」に繋がる。
では「生まれ変わり」と「瞳」がどうつながってくるのか?
ヒロインの「死んだら火葬して」は明らかに死亡フラグ。
2人は結婚を決めるも,直後にエレベーター事故でヒロインは死亡。
主人公はヒロインを火葬し,少しのあいだ落ち込むも,すぐさまラボの同僚に乗り換え,妊娠・出産(切り替えが早い)
すると生まれた赤ん坊の虹彩が,故人のものと一致することが判明する(主人公のラボの研究は,虹彩認証システムに発展し,世界中に普及。生まれた赤ん坊の虹彩はすぐさまデータベースに登録される。主人公に生まれた子供の虹彩を登録したところ,主人公の妻の妊娠直前に死んだ男性の虹彩と一致することが判明したのだ)
さらに,生まれたばかりの赤ん坊は,同じ虹彩を持つ個人が生前暮らしていた場所や飼い犬,家族の写真に反応。
虹彩のみならず記憶までもが受け継がれていたのだ。(実際のところ,虹彩と記憶がどれほど強いつながりを持つのか,ということは気になってくる)
「じゃあ他の人の虹彩は?」と,死んだヒロインの虹彩と一致する瞳を探す主人公。すると,7年前に死んだはずのヒロインの虹彩と一致する虹彩が,つい最近インドで登録されていた。
すぐさまデリーに飛び,ヒロインの生まれ変わりの少女を発見する主人公。
記憶も受け継いでいるかテストするが,有意差は見られない(いわゆる誤差の範囲)
しかしエレベータに対して過剰な恐怖反応を見せる少女を見た主人公は,この子こそヒロインの生まれ変わりだと確信したところで物語は終了。
主人公はミミズに目を与える研究をすることで,進化論を根拠づけ,生命の創造主としての神を否定。しかし同じ瞳の研究から,逆に魂の転生の可能性が浮かび上がってくる,というオチ。
科学者が超自然的なもの,非科学的とされるものを信じるようになるという構図は『コンタクト』(1997)を思い出す。
生物学に関する前提知識があるとより楽しめるだろうと思う。
科学研究が主題となる映画の中では,比較的丁寧な説明がされていると思う。
・ヒロインはしょっちゅう「(白)孔雀」について口にする。孔雀といえばインド,インドといえば神秘的なイメージ。ということで孔雀もまた,科学的であることを重視する主人公と神秘的なヒロインを対比させる道具である。劇中で述べられることはないが,孔雀といえば目玉のような羽模様である。そのため孔雀もまた「瞳」に関連している。(ギリシャ神話に登場する巨人アルゴスの逸話を思い出す)
・冒頭タイトルロールでは,「I O I I」がはじめに表示され,他の文字が浮かび上がるようにして「I ORIGINS」となる。ここで「IOII」は2進数「1011」にも見える。1011を十進法になおすと「8+0+2+1=11」となる。「11」という文字は,劇中度々登場する数字である。「11」という文字にどのような意味があるのかわからないが,冒頭の時点で「11」というキーナンバーが登場することが暗示されているのである。