ヴィンセントが教えてくれたこと : 特集
たった4館から2500館へ、口コミで全米ロングラン・ヒット!
「はじまりのうた」「シェフ」の“次なる良作”は、この不良ジジイと少年の友情物語!!
「ロスト・イントランスレーション」のビル・マーレイが、ひょんなことから少年と行動を共にする孤独な毒舌ジジイを演じる「ヴィンセントが教えてくれたこと」が9月4日から日本公開。わずか4館から2500館へ拡大公開、ゴールデングローブ賞作品賞&主演男優賞ノミネートを果たした同作は、良作映画ファン好きにはたまらない要注目作だ。
■ゴールデングローブ賞ノミネート&全米口コミ・ロングヒット
これが《1年に数本あるかないかの良作》の証!
映画ランキングを賑わせる超大作映画のように、主人公が世界を股にかけたり地球を救ったりはしないけれど、ささやかな映画ながらも、見る者にとってかけがえのない1本となる作品がある。「チョコレートドーナツ」「はじまりのうた」「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」等、小規模作品ながらも、映画ファンの心に大きな印象を残す「良作映画ファン必見の作品」。その系譜に連なる新たな1本が、本作「ヴィンセントが教えてくれたこと」だ。
全米では、わずか4館の限定公開が、幅広い観客の共感を勝ち取って最終的には2500館に拡大。週末興収ランキングでは最高4位を獲得し、実に9週連続ベストテン入りというロングラン・ヒットを勝ち取った。累計興収4400万ドルは、製作費の3倍超。2014年に数館の限定公開から4000万ドルを突破した作品は、本作以外には「グランド・ブダペスト・ホテル」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」しかないというのだから恐れ入る。批評家からの評価も抜群で、ゴールデングローブ賞ではコメディ/ミュージカル部門の作品賞と主演男優賞(ビル・マーレイ)にノミネート。さらにナオミ・ワッツ、メリサ・マッカーシー、テレンス・ハワード、クリス・オダウドら、個性あふれる実力派キャストが顔をそろえているとなると、映画ファンなら見逃しておけないのは確実だ。
ひねくれ独居老人と、いじめられっ子少年の一筋縄ではいかない友情ストーリーは、ハリウッドの製作陣が製作前の優れた脚本を選出する「ザ・ブラックリスト」にもリストアップ。傑作「アルゴ」や「ダラスバイヤーズ・クラブ」も選んでいた権威のお墨付きだけに、その面白さにも納得なのだ。
■危ないジジイと優等生の小学生が出会ったとき──彼らは最高の親友になった!
“年の差を超えた友情”が、全米に続いて日本でも喝さい浴びる!!
米ニューヨーク・ブルックリンの住宅街にひとりで暮らすヴィンセント(ビル・マーレイ)は、アルコールとギャンブルにおぼれ、口を開けば毒舌ぶりを発揮するひねくれ老人。ねんごろな関係のロシア人ストリッパー(ダカ)しか寄りつかない彼の隣家に、ワケありシングルマザー、マギー(メリサ・マッカーシー)と12歳の息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)が引っ越してくる。ふとしたきっかけで、オリバーの面倒を見ることになったヴィンセントは、彼をいつもの競馬場やバーへと連れ回すが……。
「最強のふたり」や「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」「ニュー・シネマ・パラダイス」など、境遇が違い、年齢にも大きな隔たりがある者同士が友情や絆を育んでいく「年の差モノ」は、共感や感動を呼ぶ人気のジャンル。本作ではどこか人生をあきらめてシニカルに生きる老人と、素直で優しい心を持ちながらも、いじめの問題を抱える少年が出会い、互いに足りなかったものを埋め合って、それぞれの人生を輝かせていく様子が描かれる。成り行きで行動を共にすることになり、当初は疎ましいと感じ合っていたふたり。だが、オリバーはいじめを克服するたくましさをヴィンセントから授かり、逆にオリバーの存在は、ヴィンセントに人生を前向きに生きる力を与える。シニカルでコミカルで、そしてシリアスな問題も描かれるけれど、最後には心が本当に温かくなる結末が待っている──そんなハートウォーミング・コメディが、日本の映画ファンも夢中にさせるに違いない。
■「ビル・マーレイが“毒舌なひねくれジジイ”を演じるって!?」
全米映画ファン&日本のコア映画ファンは、“それだけで”ワクワクが止まらない!
本作の最大の魅力は、「毒舌なひねくれジジイをビル・マーレイが演じていること」と言っても過言ではない。1975年から続く伝説のコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」出身で、「ゴーストバスターズ」「恋はデジャ・ブ」のコメディで人気を誇ったマーレイだが、03年の「ロスト・イン・トランスレーション」でアカデミー賞主演男優賞ノミネート、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された05年の「ブロークン・フラワーズ」で高い評価を受けるなど、近年はシリアスな演技派としても評価を高めている。
コミカルでおかしいのに、どこか哀愁も漂わせる唯一無二の存在感に、全米映画界内外から熱い視線が集中。ジム・ジャームッシュ監督やウェス・アンダーソン監督ら個性派監督が数々の作品でラブコールを送り、人気ホラー・コメディ「ゾンビランド」の中盤で、見る者を爆笑させる“一番美味しい役”を用意されていることからも、それは明らかだ。本作で初メガホンをとったセオドア・メルフィ監督も「ヴィンセント役には彼しかいない」と、事務所に属さないマーレイの携帯電話番号だけを頼りに、半年間に渡って(留守番電話にメッセージを残すことで)出演を交渉。念願かなっての対面では8時間掛けて説得したというから、マーレイがどれほど愛されていたかがうかがえるだろう。また、マーレイは、テレビ出演の際にコスプレで登場したり、ファンのカラオケ・パーティや街中で行われている普通のイベントにふらっと出没することでも有名。そんな気さくさや突拍子のなさが、“変なおじさん”として誰からも愛される大きな理由なのだ。
そんな愛すべき個性派マーレイが、ひねくれ老人を演じる。彼個人の存在を知る映画ファンほど、本作にワクワクしてしまうのは間違いない。笑わせてくれるのに、人生を歩む孤独と切なさをひしひしと感じさせてくれる円熟味。これまでマーレイをそんなに知らなかったという人も、今作を機にそのだいご味を味わっていただきたい。