独裁者と小さな孫

劇場公開日:

独裁者と小さな孫

解説

クーデターで地位を追われた独裁者と幼い孫の逃亡の旅を描いたヒューマンドラマ。「カンダハール」などの巨匠モフセン・マフマルバフ監督が平和への想いや未来への希望を込めて撮りあげた。独裁政権が支配する国でクーデターが起きた。これまで国民から搾取した金で贅沢な暮らしを送り、政権維持のため多くの罪なき人々を処刑してきた老齢の独裁者は、幼い孫と共に逃亡生活を送ることに。羊飼いや旅芸人に変装して正体を隠しつつ海を目指す彼らは、その道中で驚くべき光景を目撃する。2014年・第15回東京フィルメックスにて「プレジデント」のタイトルで上映され、観客賞を受賞。

2014年製作/119分/PG12/ジョージア・フランス・イギリス・ドイツ合作
原題または英題:The President
配給:シンカ
劇場公開日:2015年12月12日

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映画レビュー

4.0考える事が一杯あって面白い

2024年1月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

監督で脚本のマフマルバフさんはなかなか異色の人で、イランかな?で政治犯だった人なの。作品の終盤で出てくる、拷問受けたりしてた人たちみたいに投獄されてて、映画と同じようにクーデターで釈放されて亡命し映画監督やってるの。
そんなマフマルバフ監督の考えが、ちょっとざっくりした書き方をするけれど、独裁政権というのは、そのものや独裁者だけが悪いのではなくて、もっと根底にある人間の悪意が問題なのだというの。

その考え方がすごく作品にも反映されていて、というか、もうそのままって感じなんだ。
バッドエンドと書いている人がいるけれど、はたして本当にそうだろうか?人によっては、見方によってはバッドではないかもしれない。場合によってはハッピーエンドなのかもしれない。それくらい色々と考えてしまうし、ただ人の悪意と善意を描いただけでエンディングなどそもそも意味はないのかもしれない。だって作品内で描かれているテーマは何一つ解決しておらず、今も続いているのだから。
監督のお考えは、作品内では割りとシンプルに表現されているけれど、その本質は、もう思想とかのレベルですごく大局的だから、いまいちピンとこないけれど、言いたいことはすごく良くわかったし興味深い面白い作品だった。

何もわからない、何も知らない孫の視点で始まり、独裁者の力の強さとクーデターによる失脚を描いた。
中盤からは大統領の視点で、今まで自分が国や国民に対してしてきた、残虐なことなどを直接的にも間接的にも知っていく。
大統領の口数が徐々に減っていき、ラストの砂浜では一言も発さなくなる。視点が大統領から国民に移ったのだ。
この、様々な視点で物語を紡ぎ変化していくストーリー展開は面白いと思ったね。
その中で、最初は国民に対して文句を言っていた大統領が、次第に変化していく様子が一番の見所だろうな。

あとは、乾いた空気感とピリピリ差すような、スリラーに近いくらいの緊張感ある映像が良かったよね。
事を直接的に見せない演出も一種の力強さを醸し出しインパクトを残した。五年ぶりに家に帰った男の顔だけを映す場面と、砂浜でのエンディングが特に印象深い。

内容的にも演出的にも考える事が一杯あって、本当に面白い作品だったね。
名前のある登場人物がマリアとマリアの二人。これがわからなくてまだ考えてるくらい面白い。

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つとみ

3.0おじいちゃんの顔を少しでも孫以外にも向けられていたら

2024年1月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

直前に観た『マイ・ファニー・レディ』との落差で余計に辛い。孫の可愛さだけがこちらの拠り所。どれだけのことをしてきたかを確認、実感するための逃避行で、どちらの立場(独裁者or出会う人々)としてみても辛かった。

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なお

0.5臭すぎる演出。

2023年7月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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When I am 75♥️

3.5【”砂上の楼閣”独裁国家崩壊後、国中を孫と逃げながら独裁者が出会った人々、知った事をシニカル・ブラックに描いた作品。独裁者を殺しても負の連鎖に陥るだけという高所大所からの視点で描いた作品もである。】

2022年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■多くの罪なき国民を処刑してきた冷酷な大統領が支配する独裁国家で、クーデターが勃発。
 大統領は幼い孫とともに逃避行を余儀なくされ、変装で素性を隠して海を目指す。
 その道中で憎しみと暴力の連鎖を目の当たりにし、自らの罪深さを思い知るが…。

◆感想

・独裁者が逃亡中に出会った人々
 それは、多くの政治犯たちであったり、昔知っていた娼婦であったり、自分の身内を処刑され独裁者への憎悪を抱くモノであったり・・。

・だが、この作品では独裁者一人を糾弾しているのではなく、独裁者に唯々諾々と従って来た兵士や民衆の責任はどうなのか!という事もシニカルに描き出している。

<祖国イランを離れて欧州で亡命生活を送るマフマルバフ監督の想いを込めた作品。
 近年、独裁者で処刑されたのは、ルーマニアのチャウチェスク大統領と、贅沢をしていた夫人が有名であるが、今作では独裁者を殺しても、負の連鎖に陥るだけである、という高所大所からの視点で描いた作品である。>

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NOBU