漫画の実写化の作品のようだ。
「たやすいことよね」
これがタイトルの意味となっている。
高架橋の下を抜けたときに志乃が言うセリフ
さて、
この言葉は何を意味するのだろう。
壊すことはいとも簡単
まずこのようなイメージが浮かんでくる。
志乃は恋愛にトラウマを抱えつつも、「次こそは端然とした恋愛をしたい」と強く思う。
でも、壊れるときはいとも簡単に壊れてしまうこの「恋愛」なるものに、自分の人生が翻弄されている気がしてならない。
元カレの幻想まで見てしまう。
志乃の恋愛に関することには、植物がモチーフとして登場する。
必ず枯らしてしまう観葉植物
枯れてもまたつい買ってしまうのは、失恋してもまたつい恋愛を求めているからなのだろう。
でも、その突然揺れ動いてしまう心の高ぶりを停めることはできない。
「新しい風が、吹いたような気がした」
恋愛感情とはいとも「たやすいもの」で、こんな些細な感情にその先を予感してしまう。
志乃は千葉から「君を一目見たときから新しい歌がオレの中で聞こえてきた」というセリフに思わず自分自身を重ね合わせた。
「こんな理由で、自分の気持ちが揺れ、今度こそこの恋愛は本物だと思い込んでいた」
きっとそう思ったのだろう。
好きだという気持ちを認めながらも、どうせ裏切られるという感覚をいつもどこかに隠している。
それは、そうなったら、自分自身が傷つくのを最小限にとどめられるから。
自意識過剰気味に神経過敏となってしまっていても、誰とでも肉体的感覚は同じで、自分の求めているものが何かわからなくなってしまう。
頭の中を言葉にしても、自分自身を正当防衛化しているだけで、自分が元カレに言われて傷ついた言葉を他の誰かに遣っている。
妊婦になった友人 もう1年以上誰とも付き合っていない志乃。
その理由を友人に見透かされてしまうが、「もう二度とあの時に戻れないと、やっと悟った。結局水をやろうが陽に当てようが、全部元通りにはならない」
しかし、
劇場で再会した店長を見て逃げ出す志乃
追いかける店長
店長の「好きだ」という言葉に反抗する志乃
それは、消そうと思っても消えないアカリとのこと。
堂々巡りの三角関係の続きなどまっぴらごめん。
お互いに気持ちをぶつけあう。
言いたかったことを、腹の底にあったことを言葉に出す。
志乃の気持ちを代弁するかのような観葉植物
もうとっくに枯れ落ちていたと思い込んでいたあのクワズイモが、店長の庭先に群生していた。
それは店長が植え株分けして増やしたものだった。
そしてもう一度店長が「愛してよ」というが、相変わらず逆切れする志乃
喧嘩は更にヒートアップする。
やがて、
もうこれ以上言葉が出なくなる。
「京ちゃんなんて、京ちゃんなんて、大嫌い」
同時に飛びつく志乃
隠し玉などすべて放出した後、新しく始まろうとしている二人の恋
いいんじゃなんでしょうか。
恋をするのも、壊すのも、「たやすいこと」
思っていることを言わないことが思い込みを大きくさせる。
傷つきたくないから信用しないのは大きな間違い。
お互いの気持ちを余すことなく言った後に残った温かさがあれば、その恋は本物だとこの作品は言いたいのだろう。
純粋に楽しめた。