マーティン・スコセッシ 私のイタリア映画旅行

2001年製作/246分/イタリア・アメリカ合作
原題:Il mio viaggio in Italia

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映画レビュー

5.0スコセッシ監督による「私の日本映画旅行」 是非観て観たいとは思いませんか?

2022年1月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

劇映画ではなく、スコセッシ監督によるイタリア映画の公開授業という趣です

DVD 2 枚組で4時間です
かなり気合いを入れて観ないとならないとお思いでしょうが、なんのなんの面白くて勉強になってするすると飽きずに観続けてしまいます
気が付けばもう終わり?もっと!という気になると思います

1時間づつ4つのパートで構成され、それぞれ章のようにチャプターが切られていますから、ご自分のペースで少しづつ観進めることもできます

冒頭はスコセッシ監督の生い立ちとイタリア映画との出会いの説明から始まります
ご存知の通り、彼はイタリア系移民の子供で、NY のリトルイタリーで生まれ育っています
自分の作品の紹介は一切ありません
おじさんが撮ったというリトルイタリーの日常風景のプライベートフィルムが少しだけあるのみです
全て、彼が影響受けた戦中から1960年代までのイタリア映画の紹介です
なので全編白黒作品です
そうでないのはごく一部元の映像がカラーであるものだけです
冒頭と最後に現代の本人が登場しますが、それもまた白黒で撮影され、粒子を粗くして紹介作品との映画の落差を無くしています

スコセッシ監督作品好きなら、彼に影響を与えた映画とは何か、彼はどうそれらを観たのかと、彼の作品のルーツを知る意味でも大変有意義な鑑賞の時間となるでしょう

紹介されるイタリア映画からスコセッシ監督自身が自身の人格形成にどれほど大きな影響があったかが語られるからです

内容は、ロベルト・ロッセリーニ、ヴィットリオ・デ・シーカ、ルキノ・ヴィスコンティ、ミケランジェロ・アントニオーニ、フェデリコ・フェリーニの作品が主に取り上げられております

その本題に入る前に史劇についての章があります
「ファビオラ」、「鉄の王冠」の紹介は、初めて観るものでしたし、ローマ帝国好きの自分にはたまらないものでした
スコセッシ監督いわく、「まるで古代ローマの報道映像を見ているようだった」
リアルさという面で、史劇とネオリアリズモが自分に大きな影響をもたらしたと語られます

前半はネオリアリズモに多くの時間を割いており、とりわけロッセリーニについては、スコセッシ監督が自分がどれほど影響を受けたのかを、多くの事例で解説しています
「無防備都市」、「ドイツ零年」、「奇蹟」、」ストロンボリ」、「戦火のかなた」、「神の道化師フランチェスコ」、「ヨーロッパ1951年」が取り上げられます
「イタリア旅行」は後半で扱われます

デ・シーカについても次いで取り上げられており、悲劇と喜劇の同居について特に影響を受けたと述べて事例を紹介します
「靴みがき」、「自転車泥棒」、「ウンベルトD」、「ナポリの黄金」は大きな扱いがされています

それぞれの代表的な作品や、スコセッシ監督が特に印象に残った作品の、さわりを数分観せて、それをスコセッシ監督はどう観たのか、どこに自分が惹かれたのか、どこがどのように凄いのかなどを解説してくれます

トリビア的な話は皆無です
スコセッシ監督の主観と、監督業としてのプロの視線のみです
それが大変に勉強なります
ノートを取らないと!いう気になります

多くは有名作品なので観たことのある作品ばかりでしょう
しかし、それらのさわりを観せられたなら、感動が新たになり、そこにスコセッシ監督の解説と視点が加わる事によってより感動を深くできると思います
また、まだ観ていない作品には、今後の鑑賞の指針になると思います

ビスコンティは、「揺れる大地」と「夏の嵐」が長い時間を取って紹介されます
スコセッシ監督は、違う時代19世紀を題材にしたネオリアリズモなのだと解説しています

ミケランジェロ・アントニオーニは、「情事」、「太陽はひとりぼっち」が取り上げられます
特に後者については、そういう解釈もあるのだと目を開かされました

フェリーニについては、「青春群像」を特に長く取り上げています
とうもスコセッシ監督自身の青春と共振するものがあったのだと思われます
「道」については、一カットと名前だけの紹介に過ぎません
それに対して、「甘い生活」、「8 1/2」は大きく扱われ、手放しで絶賛されています

本作は、「私のアメリカ映画旅行」の続編として製作されたものです
スコセッシ監督なら、日本映画編も作れるはずです
スコセッシ監督による「私の日本映画旅行」
是非観て観たいとは思いませんか?

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