「等身大で地に足が着いた素晴らしい作品」きみはいい子 harukitaさんの映画レビュー(感想・評価)
等身大で地に足が着いた素晴らしい作品
『そこのみにて光輝く』の呉美保監督の作品ですね。
新米教師の岡野、虐待ママの雅美、認知症気味老人のあきこ、この3本のストーリーが平行に語られる本作。
どのパートにも共通しているのが、子供(たち)と、その周りの大人(たち)との関わりである。
昔から子育ての悩みはあったろうし、子供(人を)を育てるということは大変(偉大)なことだと思う。
今の若者たちが現在の日本で子育てをしていくのはたいへん厳しいのが現実なのではないだろうか?
そんな若い人たちにも是非観てもらいたい作品です。
私も以前は子育てに悩む父親として、本を読んでみたり、それこそ映画の中に答えを探してみたり、暗中模索したものです。
そんな中で自分なりに出した答えみたいなものがあって、それが本作には全て入っている気がして、本作が放つテーマやメッセージに共感するところがとても多い作品でした。
本作の中で雅美ママ(尾野真千子)がママ友(池脇千鶴)から「一度も子供の頭を撫でないんだねぇ」と言われるシーンがあります。
きっとこの雅美ママも子供の頃に[いい子いい子]してもらったことが無かったのでは無いでしょうか?
《私が今、誰かにしてあげていることは、私も誰かにして貰ったことである》という言葉を思い出しました。
自分がされたことの無いことはきっと出来ないんだろうと思います。
そして甘えた記憶も無いのかも知れませんよね。
だから旦那さんにも甘えることが出来ずに鬱積していくばかり…。
悪循環ですよね…。
なんとか自分を愛せれば…。
そして今、誰かに愛されていれば…。
でも子供はママを愛しているんですよね。叩かれても、突き飛ばされても…。
自分が悪いと自分を責めながら、それでも真っ直ぐにママを愛して、愛してもらいたいと願っている。
そして
ママ友(池脇千鶴)も虐待を受けて育ったことが描かれています。
彼女も自分の過去と葛藤しながらも、なんとか世代間連鎖を絶ち切ろうと(自分自身と)闘っているのかもしれませんね。
これらは本作のほんの一部であり、本作の感想を全て語っていたら、たいへんなレビューになりそうで、とても全ては語り切れませんが、それほど素晴らしい作品だということです。
また安易な着地になっていないのも本作の素晴らしいところではないでしょうか?
教師の岡野(高良健吾)が何度も繰り返し言う「分かんないけどね」は印象的です。
安易に答えが出ることではないんだと思います。
簡単に解る筈もないでしょう。
一人一人事情が違うのですから。
でも扉をノックしなきゃ何も始まらない。
答えは本作を観た人それぞれが考えていくものなのでしょう。
私は
きっと完璧な子育てなんて無いんじゃないかな?
と思います。
今、あなたの隣でお子さんが笑っているなら、きっとあなたの子育ては成功しているんですよ!きっと。
分かんないですけどね。
最後に映画
『チョコレート・ファイター』より
誰も完璧に生きることは出来ないー
まして心に傷を持っていればなおさらだー
しかしそんな人生を救ってくれる唯一のものがあるー
それは愛であるー