「必ず守り抜く!」天空の蜂 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
必ず守り抜く!
DVDで鑑賞。
原作は既読です。
映画化されると知った時、歓喜すると共にどうするんだろうと思いました。原作では超大型ヘリコプター「ビッグB」の技術的な説明や原発の機能が詳細に記されており、その情報量たるや膨大なものでした。それをどう分かり易く映像化し観客に提示するのだろうか?そもそもすごいスケールの物語を日本映画の予算内で表現出来るのだろうか?
東日本大震災での原発事故を経験した今、もはやフィクションとは言い切れない現実的な脅威をこのタイミングで描くと云う挑戦に、製作者たちの強い意気込みを感じました。
情熱の賜物か、予想を上回るクォリティーのクライシス・サスペンスが誕生しました。劇場で観れなかったことを後悔しました。当初の心配はどれも杞憂だったのです。
ビッグB開発責任者・湯原(江口洋介)と原発の設計者・三島(本木雅弘)。ふたりのエンジニアを主人公に、前代未聞の危機に立ち向かう熱い物語が展開されました。技術者同士の情熱とプライドがぶつかる様は人間的な迫力があって圧巻。
ヘリに取り残された子供は湯原の息子と云うわけで、王道な親子の物語も描かれており、涙腺を刺激されました。これは原作には無かった要素だと思います。技術者の矜持と父親の気持ちを胸に奮闘する湯原。決死の活躍に胸が熱くなりました。
CGを多用したクライマックスは興奮必至。原発上空にホバリングするヘリコプターからの決死の救出劇がとにかくスリリングで、手に汗握りました。「電波よ、届けーーーっっっ!」とテレビ画面に向かって叫んでました。映画館だときっと堪えるのに必死になっていたことでしょう。
これぞまさにエンターテインメントだな、と…。東野圭吾原作なだけあって、あっと驚く展開が待ち受けており、さりげない伏線に要注目。そこは多くのミステリー作品を手掛けている堤幸彦監督の面目躍如で、普段のユーモアを捨てた硬派な演出が光っており、素晴らしかったです。
※修正(2023/05/02)
CBさんへ。
コメントありがとうございます。
原作からの換骨奪胎って難しいですよねぇ…。脚本家の力量が試される問題ですねぇ…。本作は素晴らしかったと思います。
そうなのですが、原作は家族愛ではない、もっともっとソリッドまでに硬派な内容なので、(期待しすぎた自分には)とても残念でした。
でも本作も原作のプロットを生かして、ちゃんと別の作品に仕上がっていることは、その通りだと思います。
映画って、難しいよなぁ、と思います。