「さよならを待つふたりのために」きっと、星のせいじゃない。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
さよならを待つふたりのために
末期ガンの少女と骨肉腫を患う青年。
不治の病に冒された若者二人の恋を描いたベストセラー小説を映画化し、大ヒットとなった青春ラブストーリー。
難病、純愛…時にうんざりするくらいのお涙頂戴要素。
しかし、これらを題材にしながら、非常に口当たりの良い好感触の作品に仕上げている。
悲壮感は薄く、ジョークやユーモアを交えつつ、爽やか。
主人公のヘイゼルも酸素ボンベが手放せない深刻な状態ながら明るくポジティブ。
とりわけ、恋のお相手のガス。
本当に難病患者かよ!?…と思うくらいナチュラル。
さすがに恋は勘弁のヘイゼルに猛アタック。
煙草まで吸う!?…と思わせておいて火は点けず、命を縮めるものに殺す力を与えないというメタファーなんだとか。
二人もファンタジー世界のような美女美男じゃない普通っぽさ。
出会い~惹かれ合い~恋に落ちるまでも勿論ロマンチックでスウィートだが、運命の恋!世界は私たちの恋愛を中心に回っている!…って言うのじゃなく、とても自然に。
邦画のこういう作品にありがちなあのベッタベタな感じはまるで無い。
二人の恋のきっかけとなったのは、ヘイゼルの愛読書。同じく難病患う主人公の物語。
唐突な終わりに疑問を感じ、ガスの計らいでアムステルダムまで作家に会いに行くが…。
そして旅の終わり、思いもよらぬ事態が…。
二人の別れは何となく察する事が出来るし、後半も描き方によっては感傷的になりがちたが、それらを踏まえた上でそうならない展開が出色。
演出も巧いが、絶賛された脚本の力によるものが大きい。
ウィットに富んだ台詞の数々など、ド定番の話も脚本が巧けりゃこうも違う。
やっぱ脚本だね~。
脚本は「(500)日のサマー」のコンビ。納得。
シャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴート、主演二人が素晴らしい。
特にシャイリーンは魅力と演技力を存分に発揮し、間違いなく代表作に。
それにしてもこの二人、「ダイバージェント」では兄妹役で、本作はカップル、「ダイバージェントNEO」ではまた兄妹に…変な感じはしなかったのかな??
ヘイゼルの母親役ローラ・ダーンが温かく優しい好演。二人を見守る家族のエピソードも疎かにされていない。
ウィレム・デフォーも風変わりな作家役で出番は少ないが印象を残す。
原題を直訳すると、“運のせい”になるんだとか。
邦題とはまるで真逆。
でも、この邦題もあながち間違ってはないし、寧ろ悪くない。
運の無い星の下に生まれたのは事実。
涙に暮れていたかもしれない。
が、僅かな間だけだったが、心の底から人を愛し、愛された。
この星の下に生まれて良かったと思える愛した喜び、生きた幸せ。