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新型ドラッグによって脳に眠る潜在能力を引き出せる様になった女性ルーシーとコリアンマフィアとの戦いを描くSFアクション。
監督/脚本は『レオン』『トランスポーター』シリーズ(脚本)のリュック・ベッソン。
主人公、ルーシー・ミラーを演じるのは「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」や『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』の、名優スカーレット・ヨハンソン。
脳科学の権威、サミュエル・ノーマン博士を演じるのは『ショーシャンクの空に』や『ダークナイト』トリロジーの、レジェンド俳優モーガン・フリーマン。
台北を牛耳るコリアンマフィアのボス、Mr.チャンを演じるのは『オールド・ボーイ』『悪魔を見た』の、名優チェ・ミンシク。
約4,000万ドルの製作費に対して4億ドル以上の興行収入を叩き出した、ベッソン監督最大のヒット作。
「薬物によって精神が拡張される」という、遅れてきたサマー・オブ・ラブの様な映画である。
「人間は脳みその10%しか使えていない」というネタは日本では少年漫画でよく用いられる。北斗神拳奥義「転龍呼吸法」の様に、未使用部分を起動する事により超パワーを引き出すというのはその手のジャンルではもはやお約束であり、科学的に正しいとか正しくないとかそういう問題ではないのである。
主人公ルーシーは、脳の覚醒により段階的に能力がアップしていく。身体機能や知能が向上することから始まり、テレパシーやサイコキネシス、メタモルフォーゼにタイムトラベル、最終的には世界そのものと同化するという何が何やら訳がわからん領域にまで突入してしまう。
百歩譲ってテレパシーくらいまでならまぁ何とか理解も出来るが、変身したり時空を飛び越えたりというのはもはや脳みそがどうこうという範囲を遥かに飛び越えている様な気がする。ベッソンよ、お前は脳みそを何だと思っているんだ💦
ブラック・ウィドウ誕生譚じゃんこれ、なんて思っていたらまさかの草薙素子誕生譚でした。スカヨハ、こんな役ばっかりやってんのね。
『AKIRA』(1988)や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)の様な日本のSFアニメからの影響を感じさせるが、スケール感は小さめ。ド派手なCGバトルなんかは特に描かれない。
それならそれで良いのだが、主人公が能力に目覚めてからは、敵対するマフィアとの戦力差があまりに大きすぎる為緊張感に欠ける。というか、覚醒したルーシーにとってチャンさんやマフィアは眼中に無いので戦うことすらしない。実際にマフィアと相対するのはポッと出の刑事。どっちにも特に肩入れ出来ないバトルシーンじゃ、やはり盛り上がらない。マフィア側にも覚醒者を配置して、ルーシーと超異能力バトルを繰り広げれば良かったのにね。
冒頭、何も知らないルーシーがどんどんヤバい方向へと追い込まれていくバイオレンスなシークエンスはほぼコント。言葉が通じないが故の雑な対応と、流れ作業の様に人が死んでいく展開には声を出して笑っちゃった😂
『グラン・ブルー』(1988)の頃から思っていたが、やはりベッソンと北野武は物凄く近い感性を持っている。今回も、笑いと暴力が入り混じるカオスな第1幕はほとんど北野映画。フランスでの北野人気を考えると、フランス人にはこういうブラックなコメディが受けるのだろうか。
前半のバイオレンスコメディは好みだったのだが、後半のSFチックな展開によりその勢いが殺されてしまった。面白くなりそうな題材だっただけに惜しい。スカヨハの魅力と90分というタイトなランタイムのおかげで観ていられるが、超能力バトルものを期待するとがっかりする事請け合いである。とりあえずベッソンは「童夢」(1983)でも読んで、SFアクションの何たるかを学ぶべし!!