「人の数だけ生があり、人の数だけ愛があり、人の数だけ死がある」悼む人 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人の数だけ生があり、人の数だけ愛があり、人の数だけ死がある
直木賞を受賞した天童荒太の同名小説の映画化。
小説でも漫画でもあまり原作を読む習慣は無いが、この小説は非常に興味惹かれ、密かに映画化を待ち望んでいた。
舞台化を経て、舞台と同じ堤幸彦監督の手によって遂に映画化された。
まずはその堤演出に驚かされた。
良く言えば個性的、悪く言えばふざけた演出が特徴だが、トリッキーな作風も笑いも一切ナシ。
真摯な演出に、堤幸彦の本気度を感じた。
亡くなった見も知らぬ人々を悼む為、全国を旅して回る主人公・静人。
なかなかに理解し難い行動。変人のようにも思えるし、今の世なら偽善者とも言われそう。
何故こんな事をするのか、こんな事をして何になるのか。
きっかけは友の死と、その友の死を忘れてしまった事。
生きて、愛し愛された記憶を忘れず、心に留めておく為に。
人の死を悼むと言う事は、それだけ人の死と向き合う事でもある。
全員が温かく見守られて死を迎えた訳じゃない。
辛い死、悲しい死、不条理でやりきれない死もある。
いじめで息子を殺された両親のエピソードがあった。
真実を歪曲され、訴えようにも訴えられない。
しかし、たった一人に死者の本当の姿を知って貰えるだけでも残された人々は救われる。
加害者や不条理な社会ばかりを憎んでいたら、死者は二の次になってしまう。
おそらく自分には無理だろう。だからこそ、響いたシーンと台詞だった。
高良健吾が抑えた演技と佇まいで静人を好演。悩みながらも旅を続ける誠実さを体現。
静人の旅に同行する倖世。ある理由から夫を殺し、文字通り夫の亡霊に苦しむ。愛と救いを求める薄幸の女性を、石田ゆり子がキャリアベストの熱演。
二人を取り巻く面々を実力派が揃い、名演を見せる中、とりわけ、末期癌と闘いながら静人へ無償の愛を捧ぐ母・大竹しのぶ、静人との出会いによって心情が変化する俗悪記事専門記者・椎名桔平、倖世の異常な夫・井浦新の怪演が印象的だった。
思ってた以上にヘビーな内容。
DV、殺人、孤独死などキツいシーンも多い。
救済するかのように美しい映像と音楽。
人の数だけ生があり、人の数だけ愛があり、人の数だけ死がある。
自分のこれまでの人生の中で、またこれからの人生の中で、どれだけの生きた証しと愛の記憶を忘れず留められるか。
ぐああ、すみません、完全にこっちの勝手な勘違いで
コメント書いてしまいましたね(汗)。申し訳ありません……。
しかしながら、こんな複雑な映画でも頭でっかちにならずに
心に響いた部分をストレートに『良い』と書けるのはやっぱり羨ましい。
僕の中では再見するつもりは無かった本作ですが、近大さんのレビューで
『もう一度この物語について考えてみるか』と思えたのは確かです。
あと、発言した以上は本も読みます(笑)。
堤監督の次回作は東野圭吾原作の『天空の蜂』というサスペンスだそうで。
本作のお陰でこちらも楽しみになってきました。
『トリック』みたいなユル~い映画もまた観たいですけどね~。
ではでは……。
近大さん、
物影が好きなので自分からコメントするのは
よほど気分がノらない限り控えてるんですが(笑)、
たまにはこちらからコメントさせていただきます。
残念ながら原作未読の僕は
この映画に今ひとつハマり切れなかったのですが
いつもの堤監督とは異なる直球勝負の演出は同じく好感が持てましたし、
(朝靄がかったような映像や土砂降りのシーン等も美しい)
監督が本作に懸ける並々ならぬ意気込みを感じました。
最終的に感じ取れたテーマも、近大さんのものに近いと思っています。
他の方のレビュー等も読むと、
この映画は原作既読の方の評価が結構高いようですね。
ベストセラーの映像化ではこれって珍しいですよね。
「原作の良い部分が削られてる!」と批判されることの方が多いのに。
未読なので何とも言えない立場ですが、
この映画が原作の芯を上手く捉えていたのでしょうか。
原作を踏まえた上で観れば、
密度の高い物語も理解し易かったのかもしれないし、
もっとストレートに物語に感動出来たかもしれない、
と、鑑賞後の今になってちょっと悔やんでおります。
長々と書いて何が言いたいかというと、
近大さんのレビューを読んで、『そんな熱い物語なら
改めて原作も読んでみたい!』と思った、という事です。
書くのも読むのも遅いですが(笑)、今度本屋で探してみます。
ありがとうございます。
返信お気になさらず!
次回レビューも楽しみにしてます!