ハーモニー

劇場公開日:2015年11月13日

解説・あらすじ

2009年に34歳の若さでこの世を去ったSF作家・伊藤計劃が、その前年に発表した同名小説を映画化。原作は、著者にとって2作目のオリジナル長編作品で、死後、第30回日本SF大賞や米国フィリップ・K・ディック記念賞の特別賞を受賞。「大災禍」と呼ばれる大規模な混沌から復興し、その反動で極端な健康志向と調和を重んじる超高度医療社会が訪れた世界。ある時、数千人規模の命が奪われる事件が発生し、その背後には、13年前、まやかしの社会に抵抗して自殺したはずの少女・御冷ミァハの影があった。ミァハとともに自殺を試みるも失敗し、生き延びて戦場の平和維持活動に従事していた霧慧トァンは、ミァハの存在を確かめるため立ち上がる。伊藤計劃の残したオリジナルの長編3作品を映画化する「Project Itoh」の1作。「AKIRA」作画監督などで知られるなかむらたかしと、「鉄コン筋クリート」のマイケル・アリアスが共同監督。

2015年製作/120分/PG12/日本
配給:東宝映像事業部
劇場公開日:2015年11月13日

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(C)Project Itoh/HARMONY

映画レビュー

3.0 無理難題への挑戦…

2025年10月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

夭折の作家・伊藤計劃氏の作品をアニメ化する「Project Itoh」シリーズの1作。

私は原作小説のファンである。衝撃的な展開と、冒頭から仕込まれていた緻密な伏線に心を奪われ、それを機にアニメ版も鑑賞する事にした。

「大災禍」と呼ばれる混乱を経て、過剰なまでに優しく健康的な監視社会が築かれた世界。WHOの査察官・霧慧トァンは、その社会の息苦しさから逃れるため、自殺未遂を起こした過去を持つ。世界中で同時多発的に自殺が起きるという事件の調査に乗り出した彼女は、その中で彼女を自死へと誘った少女・御冷ミァハの影を見る…。

作画クオリティ、ふんだんに使われたCG、独創的なデザインなど、評価すべき点は様々ある。だがしかし…手放しで絶賛出来るか、と言われればそうではない。

……そもそもの話だが、原作小説を映像化するのは極めて無理がある。SF小説としての凄まじい情報量、重く難解なシナリオやメッセージ性、そして何よりも「小説だからこそ」成立する伏線とトリック。アニメに限らず、映像化する事そのものに全く向いていない。無理難題と言っても良いだろう。そんな作品をそれでもアニメ化しようとした制作陣の勇気には敬意を表する。

あの原作を2時間弱に纏める事が出来た時点でかなり頑張っているとは思うのだが、私が個人的に気になったのはシナリオの改変や映像化に当たっての展開である。
冒頭の時点で、小説に仕込まれていた伏線の答えが明示される。完全初見ならば何のことやら分からないだろうが、原作読者は一瞬でその意味に気付いてしまうだろう。読者としては、映画開始早々に興醒めだった。
そしてラストの改変。全てに決着を付ける際のセリフやトァンの心情に、GL、百合的な要素がかなり盛られている。……正直「ハーモニー」という作品にそんなものは求めていない。原作の冷たくも物悲しい雰囲気を期待していただけに残念だ。事を終わらせた後の下りもカットされており、「見たいものを見られなかった」感は否めない。

原作ファンとしては少々ストーリーにおいて残念な点が目立つ印象だが、それ以外は先述したように中々良い出来だ。
声優陣は豪華で実力派揃い。特にミァハ役の上田麗奈女史の演技は凄まじい。ミァハの設定にピッタリな、儚げながらもどこか無機質で恐ろしい声。この演技を聞けた事はこの映画の最大の評価点と言っていい。この芝居で当時弱冠20歳と言うのだから恐れ入る。

万人にオススメできる内容ではない上に専門用語も多く、初見で観るにはかなり難しい映画である。物語を知りたいなら、原作を読む事を強く勧める。
その上で声優陣の演技や、戦闘シーンといった映像ならではの美点を味わう、というのが、この映画の楽しみ方だろう。

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しゅわとろん

2.0 キャラデザインが・・・・

2025年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

キャラデザが(うーん)と言う第一印象で気が削がれてしまい、そのまま集中出来ずにエンド。
原作を読んで確認したくなる内容ではあったかな。

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bebe

3.5 これまた原作の世界観か?アニメの世界観か?

2025年10月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

驚く

斬新

ドキドキ

🎦虐殺器官とは全く違うテイストで来たが、少しくどめであった.原作のせいか、アニメ技術の拙さのせいか・・。しかしのその世界観は大いにトキメキの彼岸にある。もう少しぶっ飛んだらめちゃくちゃシュールの作品なっていた可能性あり。少し原作に引きづられたか?

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mark108hello

1.5 自分にとっては解釈違いが甚だしく、正直つらい作品だった。 伊藤計劃...

2025年9月24日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

自分にとっては解釈違いが甚だしく、正直つらい作品だった。
伊藤計劃は既に亡くなっているため、本作の描写が、彼の脳内にあったイメージと一致していたのかは永遠にわからない。だが少なくとも私にとっては、原作を読んだときの印象とかけ離れており、最後まで観るのが厳しかった。

特に気になったのは二点。
一点目はミァハとトァンのデザインである。原作では登場人物の外見描写は一切といってよいほど書かれていないため、ミァハの見た目は読者の想像に委ねられている。しかし、それでも〈外国人だとわからないほど日本人に馴染んだ〉と明記されている以上、ミァハを銀髪の“いかにも外国人”風の容貌にするのは不自然ではないか。数少ない明示的な外見情報が無視されている点が気になった。
同様に、トァンの髪色が赤いことも引っかかった。公共との調和が最優先される社会において、彼女があのように派手な外見を選ぶとは考えにくい。

次に、ミァハとトァンの同性愛をほのめかす描写である。そもそも本作の漫画化企画でも百合作品としての方向性が検討されたと聞くが、原作を読了し、この映画を観るまで、二人がレズビアンだとはまったく思わなかった。むしろ、安易な百合的解釈は原作のテーマを陳腐化させているように思えてならない。前作『虐殺器官』に見られる冷徹で現実的な筆致を踏まえても、伊藤計劃が『ハーモニー』を意図的に百合小説へと仕上げたとは、私には思えない。

繰り返しになるが、作者は既に亡くなっており、真相は闇の中だ。だがそれゆえ、原作を読み込んだ読者の感性もまた、軽んじるべきではない。本作は、原作を先に読んだ私にとって、あまりにもイメージから乖離していた。

結局のところ、私は本作を、原作準拠の完成度が高い映画版『虐殺器官』と比較してしまう。『虐殺器官』の地に足の着いたSFに比べると、本作は足が地についておらず、完成度でも見劣りする。ゆえに私の評価は下がらざるを得ないのだ。

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Kamoshika