美女と野獣(2014) : 映画評論・批評
2014年10月28日更新
2014年11月1日よりTOHOシネマズスカラ座ほかにてロードショー
有名なおとぎ話を、怒濤のバトルファンタジー的なテイストで見せる
ディズニーアニメ「美女と野獣」が製作されてから、はや23年。いまや、野獣にかけられた魔法をベルの愛が解くというこの物語も、おとぎ話の絵本より、あの名作アニメで出会う人のほうが圧倒的に多いだろう。そんななか、物語を生んだ本家フランスによる実写化である。
しかも、主演コンビは、ハリウッドでも活躍するバンサン・カッセルとレア・セドゥー。いま、この2人ほど、この作品にふさわしいオーラと実力を兼ね備えたキャスティングはない。
実際、あのクールな美貌でありながら、父を思う娘の純粋さや野獣への揺れ動く想いを複雑な表情の奥にたたえるレアは、さすがパルム・ドール女優。バンサン・カッセルが演じる野獣は、マントをまとった後ろ姿はもちろん、ときおりクローズアップになる野獣の口元すらも妙にエロティック。野獣の姿にされる前の高慢王子ぶりにすらも危険な色気が漂うあたりは、かつてクリストフ・ガンズと組んだ「ジェヴォーダンの獣」で演じた倒錯貴族に妖気すら感じさせたバンサンならではだ。
そう、これはクリストフ・ガンズ監督作。クリーチャーが登場するホラーやアクションを愛する男の作品である。カリスマティックな主演コンビに目を奪われがちだが、誰もが知っているおとぎ話をどう味付けしているかこそが最大の見どころなのだ。
はたして、ガンズはドレスや野獣の城の装飾で女性好みのゴージャスなビジュアルも楽しませ、最新VFXを駆使して王子が野獣にされた理由を神話的な美しさで描きながら、怒濤のバトルファンタジー的な世界へとなだれこんでいく。そのテイストはまぎれもなくクリストフ・ガンズ。おとぎ話をここまで自分の色で描けることに、拍手せずにいられない。
一見、女性ターゲットの作品だけれども、60年代の日本映画「大魔神」シリーズへの目配せもあって、特撮映画ファンにとっても異色作として記憶されることになるのでは?
(杉谷伸子)