劇場公開日 2014年12月12日

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「犯罪劇ではない」ゴーン・ガール せじけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5犯罪劇ではない

2014年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

知的

犯罪サスペンスに見せかけた全く別の映画でしたね。レビューなどでそれは気付いていましたが、では何なのかが分からず、確かめるために観ました。結果、いい意味で裏切られましたし、とても楽しめました。二転三転する展開も面白いですが、それ以上に語られているテーマが興味深い作品でした。

他人から期待されている自分と、本来の自分とのイメージの違いが物語のテーマです。夫の望む妻、妻の望む夫、メディアの望む被害者像、読者が望む物語の主人公……それに従っているうちは幸せなのに、そこから少しでも外れた行動を取ると途端にトラブルになる。これは誰もが経験することなのに、ここまで端的に描いた映画は、もしかしたら初めてかもしれません。

怖い話というレビューが多く見受けられましたが、僕は、人の本性というものは多かれ少なかれこの物語のような要素を孕んでいると思うので、むしろこの視点を物語に持ち込んだことにとても感動しました。夫婦というものを劇的にデフォルメしていますが、同じような葛藤はどの夫婦にもあるのではないでしょうか。

そしてまた結末が素晴らしいのですが、これ以上は完全にネタバレになってしまうので遠慮しておきます。しかし、この結末が笑ってしまうほどあけすけで、しかし本質を突いていてドキッとしました。

デヴィッド・フィンチャー作品の中では、あらゆる要素が逆なだけで『セブン』に一番近い作品かもしれません。妻と鑑賞しましたが、二人ともとても楽しめて、その後の会話も弾みました。既婚者にはぜひ観ていただきたい作品です。

せじけん