ゴーン・ガール : 映画評論・批評

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ゴーン・ガール

劇場公開日 2014年12月12日
2014年12月2日更新 2014年12月12日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

結婚という夢に固執した女のサスペンスフルなブラック・コメディ

ゴーン・ガール」はギリアン・フリンの大ヒットしたサスペンス・ミステリーの映画化作品である(脚本をフリンが担当)。ニューヨークから夫の故郷であるミズーリ州に越してきた夫婦が主人公だ。5回目の結婚記念日に、妻のエイミーがこつ然と姿を消す。彼女が最後に目撃された自宅のリビングには偽装工作の痕跡があり、誰もが夫のニックに対する不信感を露にする。

原作の前半はエイミーが失踪するまでの、夫婦の息詰まるような関係を描いていた。ニューヨークで華やかな生活をおくっていたニックとエイミーの後ろでアメリカの経済が大きく傾き、それがミズーリ州まで追いかけてきて2人を蝕んでいく。デビッド・フィンチャーの映画版はその要素が薄い。唐突に消えたエイミーの行方を追うミズーリの人々を俯瞰するような突き放したトーンの向こう側に、人を不安にさせる何かが渦巻いているのを見せるに過ぎない。

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ベン・アフレックが演じるニックは受け身で感情をはっきり表すこともなく、人々を苛立たせる。暴力や姦通、背後にある様々なものを匂わす気配は漂っているが、はっきりとつかむことが出来ないのだ。その不安定なムードは中盤以降がらりと変わってくるのだが、原作に忠実なそのドラマティックな展開の意味すらも、前半における事件の描き方によってやや変わってきている。原作にあった社会的な背景をより遠くに置くことで、フィンチャーは結婚生活というより普遍的なテーマにフォーカスしたようだ。これは結婚における幸福という絵に描いた餅を求めた女に関するサスペンスフルなブラック・コメディなのだ。

そう、コメディなのである。だとすればニール・パトリック・ハリスの起用も納得がいく。よくよく考えれば、妻が夫に関する妄想に苛まれて右往左往するヒッチコックの「断崖」だってコメディっぽかったではないか。この映画のメッセージは明らかだ。エイミーが求めた幸せを打ち砕いたのは社会の変化でも不実で頼りがいのない夫でもない。最初からそんなものは空虚な夢であり、その夢に固執すれば固執するほど、人は滑稽に見えるものなのだ。

山崎まどか

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