劇場公開日 2014年8月1日

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サンシャイン 歌声が響く街 : 映画評論・批評

2014年7月28日更新

2014年8月1日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかにてロードショー

悩み多き人生に差し込む光を謳う、スコットランドのジュークボックス・ミュージカル

ジュークボックス・ミュージカルとは、「マンマ・ミーア!」や「ジャージー・ボーイズ」のように、既存の歌を集めて作られたミュージカルのこと。この「サンシャイン」もしかり。スコットランドのフォーク・ロック・バンド、プロクレイマーズの楽曲を集めて作られたジュークボックス・ミュージカル(舞台作品)の映画化だ。

特筆すべきは、曲と場面の整合性。冒頭、アフガニスタンの戦場へ向かう兵士たちが歌う「Sky Takes The Soul」は、1987年(アフガニスタン紛争勃発の14年前)にリリースされたデビューアルバムの曲だが、死と背中合わせの不安を訴える歌詞は、この場面のために書かれたオリジナルのように感じられる。プロクレイマーズに対する理解とリスペクトに裏打ちされた曲の使い方は、このミュージカルのいちばんの魅力だ。

スコットランドのリースに住む家族を主人公にした物語は、三組の男女の愛の試練にスポットを当てている。結婚25周年を迎えた夫妻(ピーター・ミュランジェーン・ホロックス)は、突然存在が明らかになった夫の隠し子騒動に揺れる。一方、夫妻のアフガニスタン帰りの息子は、同棲まもない恋人との価値観の相違につきあたる。さらに、彼の妹は、恋人にプロポーズされたことでキャリアをとるか結婚をとるかの選択を迫られる。

この登場人物の中に悪気のある者はひとりもいない。それなのに全員が大いに傷つき、大いに苦悩するはめになる。人生とはかくもままならないもの。しかし、だからこそ思いがけない喜びに出会うこともある。そのささやかな幸福感が、ここでは曇天ばかりのリースの街に差し込む太陽の光になぞらえて描かれる。

ディズニー・ミュージカルのようなファンタジー性や、「レ・ミゼラブル」のような大作感とは無縁だが、このミュージカルにはスライス・オブ・ライフ(ごく普通の人の人生を切り取った作品)の趣がある。それがとても愛おしく感じられる作品だ。

矢崎由紀子

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