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映画「We Can't Go Home Again」 We Can't Go Home Again
劇場公開日:2013年6月15日
解説
「大砂塵」(1954)、「理由なき反抗」(55)などで知られるアメリカ映画界の巨匠ニコラス・レイが、晩年に講師を務めていたニューヨーク州立大学ビンガムトン校の映画学科の授業の一環として、学生たちとともに作り上げた長編作。劇映画やドキュメンタリーが混在し、複数の画面が交錯するなど、さまざまな手法を用いて作られた実験的作品。73年のカンヌ映画祭で上映されるが、それ以降も追撮や編集が続けられて完成することはなかった。2011年ベネチア国際映画祭でデジタル復元されたバージョンがプレミア上映されており、同バージョンを劇場公開する。
2011年製作/93分/アメリカ
原題:We Can't Go Home Again
配給:boid
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2020年10月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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巨匠ニコラス・レイ教授の「映画の授業」との邦題に惹かれて観たのだが、いきなり「映画は教えられない、それは生き方であり体験だからだ」と言われて出鼻をくじかれました。
晩年、実際にニューヨーク大学の講師の職を得たレイが教壇を舞台に自身を狂言回しに設定、学生たちをキャストやスタッフにして現代アートのような体験学習映画を創ってしまった。
授業のように始まった劇中でレイが学生たちに出した最初の課題は待遇改善を訴えるアッティカ刑務所の囚人たちを支持するデモの撮影でした。
群衆の中から何を切り取るか、センスを問われる課題でしたが講評には至らず映像がバラバラに映されるだけ、同様にダンサー志望の女学生に動きを教えるとか如何にもですが後に踊っている様子がちょこっと画面に出るだけ、一貫して答えは言いません。次のお題が恋愛映画、と言っても学生たちが撮ったのはポルノ風だったりサスペンスやホラーもどきとバラエティ豊か、挿入されるエピソードも実体験なのか脚色なのか定かでない。人物像も売春やドラッグに嵌る一見おとなしそうなギャップに満ちた女学生、警官の父を尊敬、聖職者志望だったと語る今どき珍しい若者などドラマの中でのキャラクターの意味付けの指導なのでしょうか。
プロットは有って無いようなエピソードの断片集なのだが教授と学生たちの交流や反発、最後は劇中で教授は首をくくるというシュールなもの。観終わってみると無茶苦茶なようで映画のエッセンスが詰まっているようでもあり、あながち邦題の「映画の授業」が嘘ではない気がするから不思議です。
それにしても映像表現の突飛さには驚きます、複数作品をマルチ画面でコラージュして見せているのですがスクリーンを再撮した画面なので個々の映像はサイズも不規則だし画質も悪く常識では鑑賞に耐える代物とは思えません、色彩表現が売りのレイ監督ですからソラリゼーションや炎風の合成などの多用で、ある種現代アート風に見せると言う挑戦なのでしょう。
ほぼ全編こんな調子だから普通の映画と思って観た人は詐欺だと思うでしょう。いわばニコラス・レイ作品のコアなファンもしくは研究者向けの資料映像とも言えますね。