エンド・オブ・ホワイトハウス : 映画評論・批評
2013年5月29日更新
2013年6月8日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
豪快さと生々しさが混在する大統領官邸の“陥落”劇
9・11テロの際も攻撃を免れたホワイトハウスは、200年を超す歴史上、テロリストに制圧されたことも破壊されたこともない。SWATの狙撃手が24時間態勢で警戒の目を光らせ、地対空ミサイルまで配備されているといわれる鉄壁の要塞。アクション映画やTVドラマにおいてもホワイトハウスが占拠された例はあまり見られず、すぐさま思い浮かぶのは「24 -TWENTY FOUR-」のシーズン7くらいか。ところが今年は「エンド・オブ・ホワイトハウス」「ホワイトハウス・ダウン」という2作品の企画が競合。まずはジェラルド・バトラーが製作&主演を兼ねた前者の登場である。
ホワイトハウスへの攻撃を実行するのは北朝鮮のテロリスト。その手口の詳細は伏せるが、制圧までに要する時間はわずか13分。一部の視覚効果の粗さに目をつむれば、ホワイトハウスの巨大レプリカを建造して撮影し、リアルタイム進行で映像化されたこの急襲シークエンスが前半の最大の見どころとなる。
中盤以降はバトラー扮する元シークレットサービスがジョン・マクレーンさながらに孤軍奮闘し、気合いと根性でテロ鎮圧に挑んでいく。そのストーリー展開に新味はないが、気がつけば犠牲者が続出したホワイトハウスは死体の山! もはやアメリカは難攻不落の超大国ではないという9・11以降の“リアリティ”がそこに見てとれる。とりわけメリッサ・レオ演じる女性国防長官のいたぶられ方は無惨のひと言。豪快な破壊スペクタクルよりも、細部に吹き込まれた“生々しさ”こそが、アントワン・フークア監督のこだわりの演出といえようか。
(高橋諭治)