聖者たちの食卓
劇場公開日 2014年9月27日
解説
インドのシク教総本山ハリマンディル・サーヒブで、毎日振る舞われる約10万食の食事がどのように用意され、人々を満たしているのか、その様子をとらえたドキュメンタリー。日本では「黄金寺院」の呼び名で知られている、インドのシク教総本山にあたる寺院ハリマンディル・サーヒブでは、人種や階層に関係なく、巡礼者や訪問者に食事が無料で提供されている。毎日約10万食におよぶという、その大量の食事がどのように用意されているのか、飽食の時代にあって無駄のない支度の様子や、調理、後片付け、巡礼者たちがひとつの家族になったかのような食卓の風景も映し出し、人々が公平に満たされることで心穏やかになる世界や、無償で働く人々の厳かな存在を描き出していく。2012年・第25回東京国際映画祭「natural TIFF」部門で上映され、同部門のグランプリを受賞した(映画祭上映時タイトル「聖者からの食事」)。
2011年製作/65分/ベルギー
原題:Himself He Cooks
配給:アップリンク
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2018年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
作る、食べる、片付ける。その様がたんたんと描かれている。
最初と最後に簡単なテロップが流れる、途中寺院に掲げられている教義のような言葉が映され、字幕がつくだけ。
特に、BGMをつけるわけではなく、その場の音を拾う。言葉がわかれば何が語られているかわかるのかもしれないと思いつつも、”生活音”として拾っているだけなので、彼らの出す音がBGM。そんな音すら、音楽に聞こえてくる。
黄金と白亜、そして揺蕩う水。
それだけでも美しいのに、人々の色の洪水。女性のサリーやパンジャビスーツのあでやかさ、しなやかさ。綿・絹・麻?そこに施された刺繍の見事さ。ため息が出る。
そして人々の顔。ひたすら自分の仕事をこなす人々。談笑する人々。休んでいる人々。ふと、自分が映されていることに気がついて、それぞれの反応をする。若者が自分を映せとばかりに寄って来るのは世界共通か(笑)。
『ベルリン・天使の詩』の天使にでもなったような気分だ。
インドはカーストがあると聞いたのに、老若男女だけでなく、富める者も貧しそうな者も、皆同じように働き、同じように食べる。なんなんだ。
無料食堂というと、日本の派遣村のように、お金がない人々にお金がある人々が恵んであげるスタイルかと思っていた。なんなんだ。
『聖者たちの食卓』とあるから、信者が神様へのお供え物を作る様の映画と思っていた。なんなんだ。
そんな私の思い込みを撃ち砕いていく。
そんな風に、映像を見ながら、自分との対話が続いていく。
自分だったら?とか、今の自分の生き方と比べたり。
作る、食べる、片付ける、沐浴する。
ただそれだけなのに、なぜか断捨離して、心が満ち足りていく。
(イベントでの上映会で鑑賞)
2015年5月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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インドにあるシク教総本山・黄金寺院(ハリマンディル・サーヒブ)
で、毎日10万食が無料提供されていることを描くドキュメンタリー。
音楽もナレーションも字幕説明(最後にちょろっと)もなしという
徹底した装飾排除は、登場するシク教徒達の無駄のない調理体制と
重なる。まさに聖者ともいえる働きに感心するのだが、これがどう
評されるかは意見が分かれそうなところ。個人的には食い足りない。
野菜カットから調理、提供、片付け、清掃に至るまで約300人体制で
スピーディに淡々とこなしていく彼らが、ごく普通にそれに携わる
ことになったその背景をもっと知りたいと思ってしまうからである。
カメラもインタビューにもほぼ動じることなく淡々と仕事を進める
彼らには、宗教も人種も階級も関係なく、老若男女が平等に手にした
食事を共に口にするという意図がある。とある世界では宗教を巡って
他信者を惨殺するような教徒がいる一方で、そんなことには関係なく
皆さんどうぞ。と生きるための食物を提供する教徒たちもいるのだ。
何だろうか、この差は。それがどうかしましたか?と云わんばかりの
何撮ってんのかしらねぇ~この人たち。という自然な姿勢が好ましい。
(玉ねぎ係は大変だ~^^;野菜切り係もたまには交代してるんだろうか)
2015年3月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
1日10万食の食事を無償で提供するお寺、しかも場所はインド。どんなカオスな映画かと思いましたが、規則的に進む作業とその中の落ち着き払った人達に驚かされました。
静寂と喧騒、熱気がかわるがわる訪れ、寺院自体が生命力で溢れています。
また、インドが持つ凛とした空気感がここ日本にも伝わってきました。一度訪れてみたいです。
ナレーションもなく、淡々と色々な瞬間が切り取られてゆく。
前情報なく見たので、各場面と登場人物達がどういう関係性なのかと最初は少し考えてしまった。
それとともに、私はこの中で食事にありつけるだろうかと考えたりもした。
当たり前のように繰り返されている日常なのだと気づいた時、急にいろいろなシーンが結びついていった。
食べること働くことをシンプルに。
気負いのない人々の雰囲気がなんとも印象的だ。
さて、実際にこの場所を訪れたとしたら、私は何をするだろう。
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