劇場公開日 2014年9月27日

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聖者たちの食卓 : インタビュー

2014年9月24日更新

10万食を無償提供する印・黄金寺院に迫った「聖者たちの食卓」が問う食のあり方

高級レストランでの外食、ファストフードの手軽な軽食など、食事のあり方が多様化している現代。そんななか、インドにあるシク教の総本山・黄金寺院(ハリマンディル・サーヒブ)では、毎日10万食におよぶ食事が無料提供されている。同院の風景から食のあり方を見つめたドキュメンタリー「聖者たちの食卓」は、忙しい日々のなか見失いがちな、食事をともにする喜びを教えてくれる。料理人、映像作家として活動するフィリップ・ウィチュス監督が、パートナーのバレリー・ベルトー監督とともにメガホンをとった本作を語った。(取材・文・写真/編集部)

黄金寺院内の無料食堂(ランガル)では、老若男女、階級、人種などわけ隔てなく食事が振舞われる。本作では、5000人が一堂に会して食事をほおばり、さまざまな人が協力して手作業で料理、片付けを行う様子が、過剰な装飾をそぎ落とした映像でありのまま映し出される。

黄金寺院の責任者へのコンタクトが難航し、撮影交渉からクランクインまで3年が費やされ、撮影は約1カ月かけて行われた。その間、ウィチュス、ベルトー監督コンビは、多くの人々と触れ合うことになった。無料食堂の核であるキッチンには、近代的な調理器具や冷蔵庫はなく、新鮮な食材が無数の料理に変わっていく様に感銘を受けたという。ひとつの食材がなくなれば別のものを使用し、1日に6、7回と変更されるメニュー――流動的な料理が24時間フル回転で行われ、ハプニングと隣り合わせの活気のある場所だった。

本作製作のきっかけは、バレリー監督が手がけたインドの古典音楽に関するドキュメンタリー「サレガ」(2010)までさかのぼる。取材の過程で、パキスタンとインドの国境の町アムリトサルで黄金寺院と出合い、短編作「ゴールデン・キッチン」を製作。しかし、「5分という非常に短い時間だったため、シク教の人々に対する敬意をきちんと表明したいという思いから、この作品をつくりました」と本作に着手した。「今回は、寺院についてもっと深く突っ込んだ内容にしようと思ったんです。インタビューもしていたのですが、宗教の話が多くて。もっと感情的な部分にフォーカスしたい、宗教が壁になってはいけないと思い、入れないという選択をしました」と「サレガ」に続き、コメントやインタビューを挿入しない手法を貫いた。

無料食堂は、シク教の「カーストや信条に関係なく、みな平等である」という教えを守るために始まった。「無料食堂の特徴は、老若男女はもちろん、それ以上に貧富や階級の差がなく、みんなが一緒に食事をするというところにあります。シク教はカーストを否定しているので、すべての差異を超えるという点が非常に重要で、同じ場所・高さで並んで食べ、一緒に礼拝をするところに意味があるんです。私自身、料理人ということもあり、これが食事のひとつの到達点であると感じ、みんなが等しく食べられることに深い意味を見出しました」

ウィチュス監督は、マダガスカルやセネガルなどでボランティア活動も行っており、インドで感じた他国との文化の違いを説明。「まず、『食べ物を与える』『施す』ということについて、考え方が違うんです。ベルギーはカトリックの国なので、無償で食べ物を提供する行為は慈善活動であり、与えられる側は貧しい人と決まっているのですが、私は食べ物は等しく与えられるべきだと思っています。そうしないと貧しい人、お金持ちなど異なる人々の間に交流がなくなってしまうので、立場の違う人が触れ合うインドの食文化の面白さを感じました」と語る。

カルチャーセンターで働き、道行く人に食事を配っていたこともあったそうで、さまざまな人々が集まる瞬間を目撃した。「『こんなところでこんなものをもらった』というような会話が生まれ、今まで話しをしていなかった人たちが交流するようになっていきました。普通のレストランでは絶対に知り合わない人同士が、そういう場だと気軽に会話をする。それが私の願っていることなのです」と熱を込めた。

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