レ・ミゼラブル(1950)

劇場公開日:

解説

早川雪洲の帰朝第二回目の作品として東横が企画し、マキノ光雄が製作を担当している。ヴィクトル・ユーゴーの不滅の大作「レ・ミゼラブル」に取材してこれを日本化し、その構成には、「きけわだつみの声(1950)」や「軍艦すでに煙なし」の構成を受け持った八木保太郎が当り、脚本は、「きけわだつみの声(1950)」の舟橋和郎、それに棚田吾郎が協力している。監督は、雪洲の第一回作品「遙かなり母の国」を監督した伊藤大輔が再びメガホンを取っている。撮影は「われ幻の魚を見たり」の石本秀雄、音楽は伊福部昭。俳優陣は雪洲の他には、コゼットの役に早川雪洲の愛嬢早川富士子が初出演し、その他小夜福子、原保美を除く他は、殆ど新劇界のヴェテランでかためている。他にフランス映画輸出組合のF・シュバリエ氏、フレンチ・ミッションのM・L・トルーヌ嬢などの特別出演がある。第一部と第二部の前後篇からなっている。

1950年製作/日本
配給:東映
劇場公開日:1950年10月3日

ストーリー

〔第一部〕一椀の飯を盗んだために十九年間の牢獄生活を送らなければならなかった岩吉は、大政奉還の大赦令により出獄したが、世間は彼に冷たかった。そして危く再び悪に走ろうとしたときミリエル司教は、彼に暖い手をのべ、無限の神の愛を教えた。天刑病として人々に忌み嫌われている男を救ったことから、岩吉は、改良絣の織機の操作を伝授され、事業と徳行を以って知られる福岡県第三区長、松野栄一として更生したのも暫くのことで、自分の前名岩吉の名を負って重罪裁判にかけられる男のいるのを知ると、苦悶したが、ミリエル司教の教えを思い出して自ら名乗り出て罪に服することになった。しかし唯一の心がかりは、転落の女お絹と、彼女に救ってやると約束したその娘小雪のことであった。折しも護送船が難破したのに紛れて脱出、小雪を無頼漢長吉の手から救い出して、何処へともなく姿を消して行った。月日は流れた。〔第二部〕その間に、徳川幕府打倒に立った西郷隆盛が、自ら作った明治政府への不満から反旗をひるがえし、薩摩の志士も続々と上京、東京の巷も物情騒然たるものがあった。こうした中にも、岩吉は強く生き抜き、藤崎万作と名乗って、富裕な生活を営んでいた。小雪も美しく成長して、志士山内と恋仲であった。岩吉はそれを知るといい知れない淋しさに襲われた。その上、福岡以来、彼の身を追っている法律の権化のような熊谷警部の手が再び身辺に迫って来た。無頼の長吉一家は、彼に執拗につきまとって、その娘のお新は、山内に横恋慕をしかけるのであった。捕手に追われて山内が傷ついて倒れ、これを介抱する小雪の必死の有り様を見て、岩吉は若い二人の愛情に負け、その山内を助けようとして流れ弾に当った。そのとき彼は追って来た熊谷をも許した。熊谷は、初めて岩吉の偉大な人格に触れ、人間愛と法との板ばさみになり、そのどちらをも取り得ない自分を恥じて自決した。小雪と山内とのささやかな結婚の日、鳴り響く教会の鐘の音を聞きながら岩吉は全てを失って後初めて得た神の光を仰ぎながら静かにその生涯を閉じた。

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