静かなる兇弾
劇場公開日:1959年9月2日
解説
菊村到の『不法所持』を映画化したもので、鈴木岬一が脚色し、「漂流死体」の関川秀雄が監督した。撮影は「空は晴れたり」の仲沢半次郎。出演は「風流交番日記」の志村喬ほか。
1959年製作/83分/日本
原題または英題:The Silent Murder
劇場公開日:1959年9月2日
ストーリー
深夜、タクシーの運転手が頭をぶち抜かれて死んだ。パトロールカーが飛んだ。目撃者はなかった。銃声を聞いた者もいなかった。拳銃はベルギー製ベアードだった。野田巡査部長と新進の田口刑事が事件を担当した。被害者の身許は分ったが、事件に関係のある人物は現れて来なかった。野田と田口は拳銃の不法所持者を探がした。野田は裏町にくわしいバーテンの水越から、拳銃にくわしいというバー「テキサス」の踊り手カラミティを紹介された。なじみ客の小林が出所不明の拳銃を持っているということだった。二人は小林を張り込んだ。カラミティの協力で小林を捕えた。しかし拳銃は夜の女のものだった。捜査は行きづまった。翌日、野田は娘の早苗とカトリック教会を訪れた。早苗は島岡技師との婚約を佐藤神父にうちあけた。推理小説ファンの佐藤神父は野田に重大なヒントを与えた。犯人は別の車の運転手かも知れない……事件に曙光が見え出した。折も折、金子という運転手がバーテンの水越を脅迫した。金子もカラミティの馴染み客であった。野田と田口は金子のアパートを急襲した。金子は小林から拳銃の密売を依頼されていたが応じなかったという。水越を脅迫したのはこの男ではない、金子の名を使った男がいるに違いない……と野田は直感した。小林には何か暗い影が感じられた。野田と田口は小林に自供を迫った。小林はついに犯人の名をあげた。ダイヤモンドタクシーの倉井運転手。しかし倉井は兇器を持っていなかった。兇器のピストルは事件直後硫黄島時代の戦友島岡にあずけたという。島岡の名をきいて野田は驚いた。島岡の働く工場を訪れると、何も知らぬ島岡は二人の訪問者に静かな調子で工場を案内した。しかし島岡は拳銃不法所持を認めていた。戦友の倉井から預かったものが拳銃であることを知った時、カトリック信徒である島岡は苦しんだ。彼は佐藤神父に真実を告げ、拳銃を神の手に渡したのである。野田はかつて訪れた教会をまざまざと思い出した。友人の秘密を守った島岡は拳銃不法所持の罪で連行された。だが、島岡を見送る早苗の瞳は美しく澄んでいた。