雑居家族

劇場公開日:

解説

“毎日新聞”に連載された壷井栄の原作を「女の足あと」の田中澄江が脚色、「神阪四郎の犯罪」の久松静児が監督した。人間の善意を衝き、愛情のあり方を究明しようとする文芸大作。撮影担当は「神阪四郎の犯罪」で久松とコンビの姫田真佐久。主な出演者は「神阪四郎の犯罪」の轟夕起子、「天国はどこだ」の織田政雄、「東京の人」の新珠三千代、「乙女心の十三夜」の安井昌二、「色ざんげ(1956)」の田中絹代など。

1956年製作/110分/日本
原題または英題:This is Home
配給:日活
劇場公開日:1956年5月3日

ストーリー

女流作家小森安江の家は夫の文吉、三十娘の音枝、二十三歳の冬太郎、七ツの夏樹の五人暮し。それに小豆島の家を出奔して来た遠縁の娘浜子がいる。桃の節句も近いある日、安江の義兄鷲兵六が、妻のおせいに出て行けと言われたと言って訪ねて来た。兵六は六十を越しているが、お人好しで身なりも粗末。三十年前、この兵六が新婚早々の文吉と安江のところへ「取引先の子だが、母親が死んだので貰ってくれ」と、抱えて来た産後間もない赤ん坊が音枝である。音枝が小学校に入る年、安江の妹小はぎは、生れて間もない男の子を残して死んだが、行先を案じた安江はその子を預った。これが今の冬太郎である。夏樹は、戦時中に安江達が仲人した夫婦の子供で、夫婦が肺病で寝込んでいるのを見兼て引取った子であった。--兵六が帰って数日後、兵六の紹介だといって斎木進という十七、八の少年が転がり込んで来た。兵六に権利金を持逃げされたと泣きべそをかかれては追出す訳にも行かなかった。兵六は相変らず、妻のおせいに責められ安江の家へ行くのだが、途中、自動車にハネられたり、子供の夏樹に貯金帳を借りて帰る気の弱さ、その頃、浜子は膏薬の宣伝ガールになっていたが、妊娠したと音江に打明け、姿を消した。浜子の妊娠を知って以来、文吉の子ではないかと疑って落着かぬ安江を、ある日、冬太郎が月夜の散歩に誘った。そこには茫を手に微笑む文吉が立っていた。一カ月後、浜子は身重の身で雑貨行商をしながら兵六の許にいた。兵六が浜子の持物を取りに来たことから居所を知った安江は、浜子を連れ戻した。安江は浜子がたまらなく可愛かったのだ。その夜、安江は浜子の母に会いに行こうと文吉に打明けた。瀬戸内海を小豆島に向って走る連絡船に、若い夫婦が歌う子守唄を聞きながら、三十年の感慨に瞳をぬらす安江と文吉の姿があった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5☆☆☆★★★ 原作は壺井栄だが未読。簡単に。 轟夕起子主演の(或る...

2018年11月17日
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☆☆☆★★★

原作は壺井栄だが未読。簡単に。

轟夕起子主演の(或る意味)母モノ映画。

女流作家の轟夕起子は、夫の織田政雄共々。自他共に認めるお人好し夫婦。
いつの間にか他人の子供を預かってしまう、その可笑しさ。

ここに、左幸子1人転がり込んで来るだけでも厄介なのに。気がつくと、好き勝手にやって来るのが伊藤雄之助。
もう作品の中での笑いどころの7〜8割位は、この伊藤雄之助が、再三再四と絡んで来るところ^_^
まさに怪演で、稀代の怪優伊藤雄之助ここにありと言うに相応しい!

左幸子は。現代に置き換えてもいそうな身勝手な感じで、映画の冒頭で登場する。
それが、自分の身に降りかかった事柄から悩みを抱え込む辺りから、感じ方が変わって来る。
初めの内は。轟夕起子が左幸子に対して叱責する言い分に、観客側は共感するのに。その事柄が判明し、更に追い討ちを掛ける叱責に。逆に轟夕起子に対して、観客側が苛々し始める様に脚本は構成されている様な気がして来た。
脚本は田中澄江。

長女役には新珠三千代。
伊藤・左に振り回されながらも、段々と増え続ける家族。絶えず苛々を募らせる轟夕起子(気持ちを落ち着かせる為に花を買うのが可笑しい)に変わり、この家族を底辺から支えている。
そんな彼女にも、悲しい悲恋に終わった過去が。
突如放り込んで来る空襲場面。
映画が公開された1956年は昭和31年。
《もはや戦後ではない》と言われた時代でも有る。
それだけにこの場面は。映画全編を通して観ても、かなり唐突と感じるのですが。原作未読の為に、元々描かれているのかは不明。ひょっとして、脚本家田中澄江がどうしても挿れたいと思っての事なのか?…も不明。

映画の中程では田中絹代が登場。
轟夕起子との2ショットは、映画フアンならば夢の様で。単なるゲスト出演的だったのは残念だったものの、感激しきり。

古い日本映画を観る際の楽しみとして、製作当時のロケーション場面で見られる風俗描写。
この作品の舞台となっているのが、都内近郊で小田急線沿線。
この家族の住む家の近くには、川が流れている事から、この川は多摩川だろうか?
そんな街並みの、現代との違いを見られるのが、また魅力の1つでも有る。

2018年11月16日 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU / 旧 国立近代美術館フイルムセンター大ホール

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