火花(1956)
劇場公開日:1956年5月1日
解説
「新・平家物語 義仲をめぐる三人の女」の衣笠貞之助と、「見合い旅行」の相良準が共同で脚本を書き、同じく衣笠貞之助が監督。舞台をサーカスにとって、恋と友情の葛藤を描く。撮影は「宇宙人東京に現わる」の渡辺公夫。主な出演者は、「四人の誓い」の鶴田浩二、「浅草の灯」の根上淳と多々良純、「恋と金」の山本富士子、「東京犯罪地図」の高松英郎と船越英二、「しゃぼん玉親爺」の八潮悠子、「高校卒業前後」の市川和子など。なおシバタ・サーカスが総出演で協力している。
1956年製作/101分/日本
原題または英題:Spark
配給:大映
劇場公開日:1956年5月1日
ストーリー
都心近くに建てられたサーカス団“金の馬”で、ある夜、火星人空中飛行という決死的曲芸の最中、火星人に扮した譲二の相手役さゆりが空中ブランコから墜落して死んだ。その場にいたたまれず外に出た譲二は、ガード下で苦しんでいる一人の女を見つけ宿舎へ担ぎ込んだ。その女、伸子は目下、当局が捜査中の銀行ギャング三宅の愛人で、彼の犯行を知り自殺を図ったのであった。身寄りのない伸子は小屋で暮すようになったが、彼女を何かと面倒をみるのは芸人の三郎であった。芸が命の譲二は無性に空中飛行の相手が欲しかった。三郎にその相手を頼んだが断られ、「一度命を捨てた女なら」と伸子にも迫ったが、その眼は妖しく燃えていた。一方、追詰められた三宅は、サーカス小屋で伸子を見つけ心中を迫ったが、なだれ込んだ警官隊に捕えられ、その時、伸子に殺到する写真班を遮ろうとした譲二も、暴れ回ったため捕えられ、伸子とともに留置された。三郎は毎日、伸子に差入れに通ったが、ある日、微罪で釈放になり、やはり伸子を思って差入れに来た譲二と出会い、二人は互いに伸子を愛していることを知った。友達同士の重苦しい、わだかまり……だが近く足を洗おうとする三郎は、黙ってサーカスを去る決心をし、譲二の申入れを受容れ、二人で最後の空中飛行をやることにした。だがそこへ無罪放免で帰って来た伸子を前にして、二人の男はさすがに動揺、一瞬互の瞳に火花が散った。異常な緊張のうちに呼び物の火星人飛行が始った。片方のブランコから三郎の体が譲二の方に向って飛んだ。満場はっと息を呑んだ瞬間、三郎の体は見事に譲二の手にかかっていた。フィナーレの音楽が華やかに鳴りわたるころ、楽屋には、伸子を諦めサーカスに留まる決心をした三郎と、外には小屋を追放された伸子をガード下に追う譲二の姿があった。