虹いくたび

劇場公開日:

解説

川端康成の原作を「乱菊物語」の八住利雄が脚色し、「宇宙人東京に現わる」の島耕二が監督、「珠はくだけず」の長井信一が撮影を担当する。主なる出演者は「新・平家物語 義仲をめぐる三人の女」の京マチ子、「恋と金」の上原謙、「新妻の寝ごと」の若尾文子、「花嫁のため息」の船越英二、「十代の反抗」の川上康子、「宇宙人東京に現わる」の川崎敬三(二役)など。

1956年製作/100分/日本
劇場公開日:1956年2月19日

ストーリー

建築家水原常男には母のちがう三人の娘がいる。姉の百子の母は自殺し、水原が次女麻子の母である妻と結婚してから、水原家に引き取られ、麻子と共に暮してきた。一番下の若子は京都の芸者菊枝の娘で、水原はもう十五年も会っていない。百子は初恋の痛手から、年下の少年を次々に愛しては捨てて行く激しい性質の女になっていた。優しく素直な麻子はそんな姉を気づかい、また今は妻にも死なれた老境に近い父の心を何かといたわって、京都にいる筈の異母妹の身の上を想ったりするのだった。娘二人を伴って京都へ出かけた水原が菊枝と久々の対面をしたころ、百子と麻子は百子の初恋の人青木敬太の弟である夏二に逢った。敬太は特攻隊員として出撃の前、百子の体を求め、そして彼女の乳型を石膏でとって銀の椀を作り、それを身につけて南海に散ったのであった。夏二に初恋の人の面影をみた百子の心の傷は、また激しくうずいた。帰京した百子は新しい愛人竹宮少年を弄ぶことで自分の運命に反抗しようとしたが、その結果、彼女は竹宮の子を宿してしまった。一方、京以来急速に麻子と夏二の心は接近し、麻子は夏二と慣れないスポーツやピクニックに一夏を過した。その過労からであろうか、彼女は急性肋膜炎で入院しなければならなかった。豪雨のある夜、百子は竹宮に子供のできたことを打ち明けるが、竹宮は驚きのあまり雨中へ駈け去った。彼の自殺を百子が知ったのは、心の安らぎを求めて京都へ来てからのことであった。激しいショックが百子を襲った。だが、敬太の父が亡き子の遺品である乳型の椀を前に、死んだ人間よりも、生きている人の幸せこそ願わねばならぬと語るのを聞きながら、彼女の心は不思議と安まって行った。そしてまだ見ぬ異母妹に会おうと思うのだった。麻子が退院して、夏二と再び楽しい日を送るのも近い。

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映画レビュー

4.0京マチ子×若尾文子

2024年7月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は、2016年1月9日「若尾文子映画祭アンコール」(@角川シネマ新宿)だったが、約8年ぶりに購入DVD鑑賞。

本作、DVDジェケットは綺麗なカラー写真だが、だいぶ古い映画なので、冒頭クレジット文字も読みづらく、画面も暗い感はあったが、観ているうちに慣れた。
主演は京マチ子×若尾文子だが、父親が上原謙。上原謙なので、京マチ子と若尾文子と(京都にいる三女)川上康子の三人の娘の母親は、別の三人の女性…(笑)
他の出演者は、冒頭汽車内で若尾文子と会う船越英二、そして京マチ子が年下の彼氏として付き合っているのが川口浩(新人)!
後年、多数の映画で若尾文子と共演した川口浩が新人ということは、本作は二人の初共演作だろうか?……調べれば分かるだろうが。
途中から若尾文子に惚れた学生として、川崎敬三も出て来る。

映画の内容は、川端康成原作の映画だけあって、なかなかドラマティックな展開であった。

京都から東京へ向かう列車の中から始まる。
列車内で赤ん坊の世話をしている男(船越英二)と正面に座った女性=麻子(若尾文子)は他人どうしだが、赤ん坊のおむつ替えで若干の会話を交わす。
帰宅した麻子は、姉の百子(京マチ子)と話すのだが、父親同じで母親違い。
この時、京マチ子が1階の部屋を出て行き、それを追いかけるように若尾文子が障子を開けると階段を上っていく京マチ子の姿が映り、二階を歩く京マチ子、二階まで追いかけていく若尾文子を映した「流れるようなシーン」が素晴らしい。
そして物語が進むと、京都に更に母親が異なる三女がいるらしいことがわかる。
三女の若子役は、川上康子。

箱根に旅行で行った父(上原謙)と娘=麻子(若尾文子)の父娘混浴シーンが衝撃的。
…フルムーンCMで上原謙は高峰三枝子と混浴だったが、それ以前にも混浴した女優が居て、それが若き日の若尾文子だったとは(笑)

長女=百子(京マチ子)の「お乳の杯(さかずき)」というのも、戦争と絡めてはいるが、これまた衝撃的であった。
原作者の川端康成は、凄い事を考える人だったんだなぁ、と思う。

文学的な香りのする古き日本映画の佳作。

<映倫No.2096>

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たいちぃ