もぐら横丁
劇場公開日:1953年5月7日
解説
尾崎一雄の『もぐら横丁』『なめくじ横丁』『芳兵衛物語』等一連の私小説を原作とし「紺屋高尾」の吉村公三郎、「大仏さまと子供たち」の清水宏(1)が共同脚色にあたった。監督は十数年ぶりにセットに入る清水宏(1)。「一等社員」の鈴木博が撮影を担当している。「関白マダム」の佐野周二、「愛の砂丘」の島崎雪子、「次男坊」の笠智衆、「安五郎出世」の森繁久彌、若山セツ子などが出演し、他に丹羽文雄、壇一雄、尾崎士郎、等現役作家が芥川賞受賞祝賀会シーンに特別出演するはず。
1953年製作/97分/日本
配給:新東宝
劇場公開日:1953年5月7日
ストーリー
三十三歳の貧乏作家緒方がその不遇の生活にも明るくたえてゆけるのは、とって十九歳になる底抜けに無邪気な若妻--芳枝のおかげといえる。北陸の女学校を卒業、すぐ上京して緒方と知りあい結婚した彼女はひどい貧乏にめげるどころか、飢に迫られての質屋通いまでたのしがろうという楽天さ。緒方の原稿をきれいに清書しては、駄賃と称してドラ焼きを買い、さもおいしげに頬ばるのである。突然訪ねてきた幼友達野々宮と映画見物に外出、そのかえりのおそいのに緒方を心配させたものの、実は閉館後ラーメン、シューマイのたぐいをお腹一杯ご馳走になったということでしかなかった。芳枝の妊娠中下宿の追いたてを食ったが、その立退き料で夫婦もろとも入院し、文学仲間の深見らが集めた出産祝いで大学生伴のすむ通称「もぐら横丁」の一長屋に引きうつる。近所の住人には緒方同様の貧乏作家たちが多かった。彼らと珍妙な交渉をかさねつつ、天真な妻、かわいい赤子に元気づけられて、緒方はかいた。最後の着物まで質にいれ、やむなく病気を装って昼日中蒲団の中にいる芳枝。--しかし彼ら二人にも輝かしい日か訪れた。緒方の作品に芥川賞があたえられたのである。賞金は借金の払いやら質の受出しやらでけしとんだが、久方ぶりに浅草で牛肉をたべ、映画をみようという緒方の発案に、芳枝は文字通りとび上ってよろこんだ。