夜は嘘つき
劇場公開日:1960年8月9日
解説
「お姐ちゃんに任しとキ!」の笠原良三のオリジナル・シナリオを、「東京の女性」の田中重雄が監督したもので、山本富士子がおキャンな下町娘に扮する。「素敵な野郎」の高橋通夫が撮影した。
1960年製作/93分/日本
配給:大映
劇場公開日:1960年8月9日
ストーリー
銀座裏にある関西割烹“灘幸”は美人の看板娘桂子が一切を切り廻している。主人の辰吉は腕の良い板前だが、五年前女房に先立たれてから、商売に身が入らず、店の売り上げを持ち出しては競輪、競馬に凝っていた。最近では、魚河岸の仲買人魚金に誘われて習い始めた小唄の師匠小えん治とわりない仲になっていた。流行作家の舟嶋、ナイトクラブの経営者谷口、独身専務の宮本の三人はいずれも生活の安定した魅力ある中年男、味の灘幸などと賞めながら実は桂子めあての灘幸通いで、お互に意識し合いながら桂子をクドいていた。しかし、桂子は無口で誠実で主人思いの板前の清太郎をひそかに愛している。辰吉の競輪場通いはますます深みにはまった。遂に、店の営業権を担保に莫大な借金を作ってしまい、店は人手に渡るか渡らないかの瀬戸際になってしまった。困った桂子は一策を案じ、舟嶋、谷口、宮本の三人から五十万円ずつ借りた。三人とも五十万円で桂子のいろよい返事が聞けるならと即座にOK。約束の日に灘幸へいそいそと足を運んだ。ところが集ったのは魚金を含めて四人。ポカンとしている三人に桂子は灘幸を有限会社にして再発足し、皆に株主となることを承諾させた。その上辰吉を家から追い出してしまった。娘が親を勘当するとは何事だとばかり清太郎が灘幸を飛び出した。ところが、不幸なはずの辰吉が小えん治の家でのんびり小唄などをうなりながら一杯やっているのに驚いた清太郎は、辰吉から二人を一緒にさせるための桂子の策略だと聞かされた。軽率な自分に後悔する清太郎は実は桂子が好きなのだが、好きと言えない、純情さが彼の身上でもあった。出ていった清太郎を思ってオキャンな桂子もさすがに淋しい。ある朝、買い出しに魚河岸へ急ぐ桂子の前に、清太郎が駈け出して来た。それを見つめる桂子の瞳には涙が浮かんできた。