白い崖

劇場公開日:

解説

「からっ風野郎」の菊島隆三の脚本を、「キクとイサム」の今井正が監督した、一青年の野望の悲劇を主題にしたドラマ。撮影も「キクとイサム」の中尾駿一郎。

1960年製作/122分/日本
配給:東映
劇場公開日:1960年4月5日

ストーリー

真夏の湖をわがもの顔に滑っていく若い二人--大橋証券社長令嬢の美千代と、社長秘書の尾形である。美千代は尾形を愛していた。彼女は母亡き後の家庭に育てられた世間知らずのお嬢さんで、姉の景子はパリに留学している。尾形は田舎出の青年だが、野心家だった。美千代という野望の鍵をつかんだ彼の心は、ただ恋に酔うという甘いものだけではなかった。突然、大橋社長が妾宅で脳溢血のため倒れた。尾形は社長を自宅に運ばせるなど、機敏に処理した。そのため、彼は社長病気中の間社長邸出向の命令を受けた。が、尾形の慢心が社長の信頼を失った。尾形は社長宅から帰された。焦慮と不満。彼は社長の妾・英子の誘惑を甘んじて受けた。英子は代償として尾形に高血圧の薬を渡した。大橋社長は再度の脳溢血を起し、死んだ。尾形は社長の遺言を発表した。創作の遺言とも思わず人々はそれを信用した。そして三カ月後、尾形は美千代と結婚した。これも遺言の一つなのだ。課長になった。ある日、美千代は医師の手を経て英子から父へ届けられた薬を返された。薬の箱の中には英子の手紙が入っていた。美千代の心に疑惑が宿った。尾形と美千代は激しく口論した。美千代はいつか頭を割られて尾形の足もとに倒れていた。尾形は断崖へ美千代の死体を突き落した。自動車事故--尾形には若妻を失ったという同情が集った。女中のトミの同情は愛情に変わり、彼女は尾形に抱かれた。そんな時、景子がパリから帰って来た。ある日、景子が尾形を美千代の事故現場へ誘った。美千代は手首の傷をかくすため、外出の時は必らず白い手袋をしたという。現場写真にはそれが見られなかった。ただそれだけの疑惑で景子は帰って来たのだ。尾形は敗北した。だが、この女を殺せばいいんだ。景子を追った尾形は、彼女を一撃した。が、そこにはトミが倒れていた。--獄窓で今は死を待つしかない尾形。野望はかくて消えたのである。

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