朱の花粉
劇場公開日:1960年2月2日
解説
週刊読売に連載された舟橋聖一の同名小説の映画化。柳井隆雄・大庭秀雄・高橋治が共同で脚色、「若い素顔」のコンビ大庭秀雄が監督し、厚田雄春が撮影した。
1960年製作/82分/日本
劇場公開日:1960年2月2日
ストーリー
東京。戦後まもない頃。もと憲兵将校の浜名は闇ブローカーをやっていた。妻の菊絵につらくあたり、昔の女・加美子を家にひっぱりこんだ。浜名の弟・井太郎が菊絵をなぐさめた。雪の夜、菊絵は子の菊夫を背に家出した。井太郎は義姉のあとを追った。二人は菊夫を伊豆のもとの女中・お菅にあずけ、銀座の闇ずし屋「すし徳」に住みこんだ。菊絵には忘れられぬ男がいた。女学校のときの教師・武中だ。父の命令で強引に軍人の浜名との縁談が進んだ。卑劣にも、浜名は武中を自由主義者として逮捕し、釈放のひきかえに結婚を迫った。菊絵は武中のために浜名に嫁いだ。武中はまもなく出征し、何も知らなかった。--旧友の千種から、武中が復員し、金沢で北欧文学のホン訳をしているとわかった。すし徳が警察の手入れを受け、菊絵らはナイト・クラブ“ホワイト・レイン”につとめ変えた。女給とボーイとして。浜名がかぎつけて来たが、支配人が追っぱらった。伊豆の菊夫に会うのが菊絵の喜びだった。“北陸新協”の東京公演があり、武中がホン訳と演出を受持った。菊絵は公演を見たが、武中に会う勇気はなかった。浜名はお菅をだまし、菊夫を連れ去った。菊絵は淋しさを酒でまぎらわせた。武中の出版記念会に、菊絵は井太郎のすすめで出た。武中に、あの時のことを話した。が、彼は冷やかに過去のことは忘れようというばかりだ。彼女はうちひしがれ、酒をあおった。井太郎は義姉との生活をうちきり、出ていった。自分の気持をおさえきれなくなるから。一年後菊絵は浜名のもとに帰っていった。菊夫の母であることを思い知ったからだ。浜名は自分の行動を悔い、喜んで迎えた。が、彼は密輸の仕事にクビをつっこんでいた。その船が巡視船に追われ、抵抗し、浜名は銃弾で死んだ。--武中が人妻の雑誌記者きね子に無理心中されかけたのが、同じ日だった。菊絵は葬式がすんだあと、病院に彼をたずねた。武中はいつかの冷い態度をわび、北海道へ行って立直ろうといった。--井太郎は東北のダム工場で働いていた。武中と菊絵母子の汽車をひそかに彼が見送っていた。