第三の影武者
劇場公開日:1963年4月21日
解説
南条範夫原作『第三の陰武者』を「新選組始末記」の星川清司が脚色、「やくざの勲章」の井上梅次が監督した残酷時代劇。撮影は「新選組始末記」の本多省三。
1963年製作/104分/日本
原題または英題:The Third Shadow
配給:大映
劇場公開日:1963年4月21日
ストーリー
下剋上の戦国時代、飛騨の貧乏郷士の伜杏之助もまた一国一城の主を夢みる若者の一人だった。ある日やって来た池本家の軍監と称する篠村左平太によって、杏之助は三谷城城主池本安高の三番目の影武者として召し抱えられた。三カ月余影武者としての厳しい訓練が重ねられ、とりわけ安高に酷似している杏之助に対するそれは過酷なもので、ついには安高の近習頭も見極めがつかぬほどまでになった。永禄九年、杏之助は安高と揃いの武装で初めて合戦に出た。闘いの最中流れ矢が安高の左眼に突きささると、篠村は素早く杏之助に眼帯をさせて代らせた。傲然と戦野を駈ける杏之助を見て奮いたった全軍は敵の城中へ雪崩れ込んだ。勝利に酔い痴れる夜、篠村は三人の影武者に左眼をつぶせと命じた。怖れをなして逃れた影の二番は連れ戻され斬殺された。二人は手術を受け左眼を醜くつぶされた。安高は桜洞城城主三木自綱の息女照姫との婚儀をすすめていた。姫は政略の具になるのを嫌ったが、謀将との誉れ高い三木定光は小国三木家の安泰を計るためにはと自分の姫を慕う私情も抑え、輿入れするよう進言した。婚儀の日取りも決った夜、同盟を結んでいた高堂城の広瀬宗城が夜討ちをかけて来た。不意を討たれて城は陥ち、影の一番も安高の身代りに戦死した。杏之助は篠村の命で右腕を失った安高を救けて桜洞城へと急いだ。途中、このまま安高を救ければ右腕を失わねばならぬことに気付いた杏之助は、安高を殺してしまい、報告を受けた篠村今は仕方なく杏之助を安高に仕立て上げることにした。自綱は彼らを丁重に迎えたが、定光の提案で婚儀は三田谷城奪回まで延期された。広瀬とはいずれ一戦を交えねばならぬ、それには安高を利用しようというのが彼の考えであった。奪回の機は熟し、杏之助は左平太と共に先陣に立った。苦戦を強いられたが勝敗の帰趨が見えたとき杏之助は混乱に乗じて篠村を刺し殺した。城も陥ちた。飛騨の安高の名は益々高く杏之助は得意の絶頂にあった。ところが、照姫との婚儀が開かれさて床入りというとき、定光が来て篠村が虫の息ながら杏之助の秘密を総て喋ったというのだ。杏之助は一切が終ったことを知った。それから二十年、三田谷城は秀吉の軍勢に攻められて落城、唯一人座敷牢に生き残った老人も衰弱甚だしくその日のうちに死んだ。それが影に生き、影に死んだ杏之助の最後であった。