残酷の河
劇場公開日:1963年5月12日
解説
「天国と地獄」の脚本を執筆した菊島隆三の原作を、彼と「禁猟区」の監督内川清一郎が共同で脚色、同じく内川清一郎が監督した異色時代劇。撮影は「星屑の町」の太田喜晴。
1963年製作/106分/日本
原題または英題:Return of the Samurai
配給:松竹
劇場公開日:1963年5月12日
ストーリー
天正十年、信長を倒して天下を掌中に握らんものと野望に燃える明智光秀は、軍資金として噂に聞く飛騨の国忍野郷に出る砂金を手に入れるため、諜者の一人岩瀬隼人にその有無を確めるよう命じた。実はこの隼人、元は忍野郷の生れであるが、三つの時飛騨を襲った飢饉のため、口べらしの犠牲になって川へ流されたところを光秀に救われたもので、忍野郷に対する憎しみは深い。山また山に囲まれた忍野郷では、支配者大庭勘介のもとに外部との交渉は一切断ち、極端な倹約生活を強いられていた。そんな生活に不満を持つ若者の一人、多助は勘介の娘ちずを騙し砂金を持って逃げようとしたが見張に発見され、来合せた隼人共々捕えられた。その夜集落の万年杉に多助が吊るされ、隼人の命も危ういものとなった。しかし、消息が途切れたら明智の軍勢が攻めよせて来るという隼人の言葉に一同は騒然となり、事実を探るため三人の若者を急拠派遺した。ひとまず勘介の家に軟禁された隼人は、勘介が自分の兄であり、ちずが姪であることを知った。その時、第一の若者が帰って光秀が天下を取ったと告げた。勘介や母すがから集落のために砂金はなかったと光秀に報告してくれるよう頼まれるが、三十年の憎しみは隼人をして冷たく断らせた。一方、光秀は秀吉の反撃に会い忽ち敗軍の将となり落ちていった。これに従う武将のうち、鬼塚、森、大神田の三人は秀吉に寝返るべく土産品として砂金を横取りしようと忍野郷へやって来た。一度は砂金はないと言った隼人も、すでに砂金袋を奪い秘密を知っている三人の前に観念し、潔く自決せんとしたが、事態は急転した。第二、第三の若者が帰り光秀が敗れたことを、あまつさえ原住民に暗殺されたと告げた。三人こそ裏切者と知って隼人は怒った。死闘小半刻、遂に三人を斬り倒した隼人は駈けよる勘介、ちずに「俺は忍野郷の人間だッ」と叫んでいた。