裸体

劇場公開日:

解説

永井荷風原作から「お吟さま(1962)」の成澤昌茂が脚色・監督した文芸ドラマ。撮影は「あの橋の畔で」の川又昂。

1962年製作/85分/日本
原題または英題:The Body
配給:松竹
劇場公開日:1962年11月8日

ストーリー

岡村左喜子は家業の銭湯の手伝いを嫌って、銀座にある税理事務所に勤めていた。所長の佐々木は、小企業主を相手に脱税の方法を教えあくどく儲けている。ある日、左喜子は佐々木に金が紛失したと疑いをかけられた。これは佐々木の常套手段で、同僚の君子もこの手で彼の毒牙にかけられていた。これがキッカケとなって左喜子は佐々木に囲われる身となった。翌日、左喜子はF市の漁師町にある家に帰った。薄暗い釜場では幼い弟妹立ちが騒ぎ廻り、父親の清助は毎日廻収にくるガメツイ経営者の倉田に泣き言ばかりを並べ、母のもよは忙しく働いていた。左喜子を真剣に愛している漁師の宗太は、結婚を申込んでくるが、彼女はうけつけない。左喜子はじめじめと活気のないこの町が大嫌いなのだ。そんなうちに、佐々木は不正監査と税務署汚職がばれて警察にあげられてしまった。左喜子は、以前退屈まぎれに習っていたバレエの教師津田の紹介で、ある料亭の秘密クラブで働くことになり、そこで代議士の兵藤と知り合った。同じクラブで働くマリー・エンジェルから、左喜子は女の体の価値というものを知らされ、自分の体に物凄い自信をもつようになった。そして、間借り先の小母さんと銭湯に行き自分の美しさをだれにでも誇示した。「男はみんな女の裸が好きなんだよ。あたいみたいに芸術的な身体をしていると、沢山お金は入ってくるしね」とうそぶく左喜子は、自分から進んで男に近づいて行く女になっていた。男の口笛、その方へ自然と流れる左喜子の目。また別な口笛、左喜子は流し目を送る。夜の舗道を靴音高く歩き続ける左喜子の誇り高く愛くるしい顔は、涙のあとをみせて、哀れにもいじらしかった。

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