野良犬(1973)
劇場公開日:1973年9月29日
解説
昭和二十四年に黒澤明監督が撮った同名映画の再映画化。ピストルを奪われた若い刑事が野良犬と化して犯人探しに執念を燃やし奔走する姿を、現代の風俗と世相を背景に描く。脚本は「藍より青く」の森崎東ほか協力者(総称・一色爆)、監督も森崎東、撮影は「女生きてます 盛り場渡り鳥」の吉川憲一がそれぞれ担当。
1973年製作/104分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1973年9月29日
ストーリー
真夏のある夜、村上刑事は路上で一人の女性を不審尋問した。そこへ六人組の男たちが現われた。アベックを狙ったひったくりである。彼らは村上に襲いかかった、村上の拳銃が地面にころがる。銃声! 女が崩れるように倒れ、村上の頭に犯人の一人がスパナを振り下ろした……。直ちに非常線がはられた。拳銃には実弾五発が装てんされていることから、捜査本部は特命捜査に切り替えた。村上の身柄は、部屋長の佐藤刑事に預けられた。二人はオートバイ解体屋、薬局などの聞き込みを始めるが、手がかりはつかめない。いらだつ村上。佐藤はそんな村上の気持をほぐすために、自分の家へ彼を連れていき、妻布恵、娘一枝に世話をさせた。数日後、古新聞収集業の社長が村上の拳銃で殺された。村上は佐藤の家を飛び出した。捜査員から除外された彼は単独で犯人を捜すしかない。毎日、毎夜、目を光らせ、流れる汗を拭うこともせず犯人を求めて歩き廻った。まるで餌を求めている野良犬のように--。そんなある日、村上の耳に聞き覚えのある言葉が飛びこんだ。あの夜、犯人たちが叫んだ言葉と同じだ。それは沖縄の言葉、もしや犯人たちは沖縄出身では?。一方、佐藤は、犯人の使った車の持ち主は暴力団であり、当夜運転していたのはハツオというチンピラだった、ということをつきとめた。そして、その車が盗まれた時の状況から、大城朱実という沖縄の少女が浮かび上った。やがて、彼女を捜査するうちに、彼女の仲間が次第に明るみに出てきた。第二の殺人が起きた。あせる村上と捜査員の動きが活発になる。そして、ついに朱実の仲間は集団就職で沖縄から本土に来た若者たちであることが判明した。比嘉、具志堅、宮里、謝花、新里、鈴木である。事件の謎は、もつれた糸がほどけるように解決した。だが彼らの目的は何なのか。若者たちの連帯感か、管理社会に対する反抗か、沖縄人に対する本土の人間の偏見と無理解なのか。やがて犯人たちは捕ったが、大きな代賞が払われた。残る三発目の銃弾に佐藤が倒れたのである。そして新里の自害。最後の弾は村上の腕を貫通した。真夏の夜の悪夢にしては、あまりにも惨い代償であった。