二人だけの朝

劇場公開日:

解説

「赤頭巾ちゃん気をつけて」でデビューした岡田裕介と「その人は女教師」の三船史郎、三船プロ専属の新人中野良子のトリオに加えて、他社初出演の江波杏子が共演する。脚本は「バツグン女子高校生 そっとしといて16才」の長野洋。監督も同作の松森健。撮影は「どですかでん」の斎藤孝雄がそれぞれ担当。

1971年製作/92分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1971年4月1日

ストーリー

啓介と二郎は兄弟でありながら、二人の性格は正反対だった。兄の啓介は大学二年生で、誠実温厚な模範青年だったが、弟の二郎は大学受験に失敗した浪人一年生で、遊んでばかりいた。そんな二人には夢があった。啓介は、自分の造ったトレーラー・ハウスで放浪の旅をし、二郎はレーサーになって、世界を駈けめぐる夢を持っていた。ある日、啓介は大学へ行く途中女子学生からカンパを求められた。これが三千子との最初の出合いだった。一方、次郎はサーキットで知り合った女流プロレーサー森村亜紀に没入したが、しょせん行きずりの愛でしかなかった。三千子は、二人を実家の牧場へ招待した。三千子の故郷を目指して三人の楽しい旅が始まった。資金の底がついて、一本の牛乳を廻し飲みしたり、エンコしたトレーラーを汗だくになって押したりしてやっと目的地にたどりついた。二人は、三千子の家族から暖かく迎えられた。そして旅の途中でエンコしたトレーラーが直るまで居候することになった。昼間は牧場で汗と埃にまみれて働き、夜は三千子と三人で楽しい時を過ごした。トレーラーが直って来た夜、三千子は始めて自分の部屋に二人を招いた。部屋の壁には大きな“ミナレット”の写真が貼ってあった。イランのイスファハーンにある不思議なミナレットの塔について、三千子は「あたし、信じているの。いつかきっとあたしをミナレットに連れていってくれる人が現われるって」と語り、三千子のあどけない夢に、三人だけのユートピアがふくれあがった。しかし、計画に没頭している時、次郎は座をはずした。納屋で独りギターを弾いている次郎を探しにきた三千子が、急に苦しそうに口許を押えてうずくまった。二郎は、意外にも、三千子が兄の子を宿したのではなく、学生運動のリーダー小坂の子だと知ると野獣のように三千子に襲いかかった。すべてが終った時、姿を見せた啓介は二人を見てガク然とするのだった。東京へ戻ってからも、啓介と次郎は口を聞かなかった。だが、二人は姿を消した三千子を探し続けていた。ある日、洋服店で働く三千子を探した二郎の計らいで、二人は再会した。三千子は涙をこらえて「不思議なミナレット」の写真を啓介に渡した。その夜、啓介は、二郎を殴りつけた。小雨の降る日、二郎は三千子を産婦人科につれていった。その帰り二郎のすすめで、いつの日か啓介と二人でミナレットを見に行くことを決心した三千子は、彼に電話しようと電話ボックスに入った。震える指先でダイヤルを廻す三千子は、何気なく置き忘れられた紙袋にさわった瞬間、その紙袋は轟然と爆発した。三千子は、しっかりと受話機を握りしめたまま死んだ。三千子を失った啓介と次郎はくじけなかった。数ヵ月後、船上の啓介と二郎を、母の里子と二人の新しい父になる高野正三が見送りにきていた。汽笛が大きくかぶさった時、啓介と二郎ははっきり見た。空から微笑みながら二人を見送っている三千子の美しい顔を。

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