真実の人間の物語
解説
一九四二年三月東部国境の空中戦闘で撃墜されたソ連空軍将校アレクセイ・メレーシェフが、重傷のため両足を失いながらもふたたび飛行士として戦場に復帰するまでの実話に取材したボリス・オレヴォイの小説が原作であり、脚色には「村の女教師」のマリア・スミルノーワ女史が当っている。監督アレクサンドル・ストルペルは映画大学の出身であり、従来は主として作家シモノフと協力して「わが町の若者」「私を待て」「昼も夜も」などをつくってきた演出家である。撮影のマルク・マギードソンは「春の流れ」「レールモントフ」「ハローモスクワ」等のカメラを担当している。作曲は「白夜」「私を待て」(四三年)や「シベリヤ物語」(四七年)等でスターリン賞をあたえられたニコライ・クリューコフである。主演のパーヴェル・カドチニコフはレニングラード演劇学校の出身であり、一九三八年「銃をもつ人」でデヴューして以来「モスクワの音楽娘」「イワン雷帝(1946)」「ロビンソン・クルーソー」(ソ連立体映画の第一回作)等をへて「間謀の功績」ではスターリン演技賞をあたえられている。またニコライ・オフロプコラは「十月のレーニン」「一九一八年のレーニン」「アレクサンドル・ネフスキー」「クツーゾフ」等に出演したソ連人民俳優であり、アレクセイ・ジーキーは「クツーゾフ」「ナヒモフ提督」等で知られている。その他「グリンカ」のワシリー・メルクーリエフ(ロシア共和国功労俳優)や「石の花」「誓い」のタマーラ・マカーロワ(ロシア共和国功労俳優)や「モスクワの音楽娘」「イワン雷帝(1946)」等のリュドミラ・ツェリコフスカヤらが出演している。一九四八年度のモスフィルム製作であり、同年度のスターリン賞を授けられた作品である。
1948年製作/ソ連
原題または英題:Tale of a Real Man
ストーリー
シベリアの大平原、千古の森林の吹雪のなかに不時着、愛機を大破させるとともに、両足に重傷を負った飛行士メレーシェフは、飢えと、寒さと、疼痛と、熊や狼など森林の猛獣の襲来や、惨虐なナチの軍隊の捕虜となる危険とたたかいながら、十数日にわたる苦闘ののちついにパルチザンのいる集落にたどりつき、村人たちの手厚い看護をうける。村人たちの知らせにより、やがてむかえの飛行機で後方基地の病院に移送されるが、飛行士として両足切断のいう致命的な傷手をこうむって、彼は一時まったく生きる希望を失い、はてしない絶望感におそわれてしまう。しかし、たまたま入院患者として同室する老政治部員ウォロビョフ(彼自身は結核で死んでゆく)の力強い激動や、軍医や看護婦たちのやさしいいたわりはしだいに彼を絶望から救いだし、力づけてゆく。とくにウォロビョフによって、第一次大戦当時片足を失ってなお飛行隊を去らず、ふたたび機上の人となる英雄的な実例があるこを教えられ、彼は奔然として起ちあがる。メレーシェフは義足をつけて困難な歩行練習をはじめ、その超人的な努力はついにピアノに合せて舞踊までやれるようになる。そのころ疾病将兵の戦線復帰を審査する委員会ができ、彼も審査をうけるが、両足切断という理由でいちどはかれの希望もむなしくしりぞけられる。しかし、委員たちの前に熱情を吐露し、みごとな舞踊をしてみせるメレーシェフの熱望はついに委員たちを動かし、彼ののぞみはいれられ、ふたたび戦線の人となることが許可される。そうしてふかい感慨をもって機上にのった彼は、かって彼が撃墜された大森林の上空から、ナチの残兵たちに力強い攻撃を展開してゆく。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アレクサンドル・ストルペル
- 脚色
- マリア・スミルノーワ
- 原作
- ボリス・オレヴォイ
- 撮影
- マルク・マギードソン
- セット
- イオシフ・スピニオル
- 作曲
- ニコライ・クリューコフ
- 指揮
- G・ガムブルグ
- 音楽演奏
- The Ministry of Cinematography of USSR
- 特殊効果
- N. Renkov