乱闘街

解説

マイケル・バルコンが製作した一九四七年作品で、「愛の海峡」と同じくT・E・B・クラークが脚本を書卸し、編集者から昇進した新人でこれが第四回作品であるチャールズ・クライトンが監督し「捕われた心」のダグラス・スローカムが撮影した。音楽は「美女と野獣」のジョルジュ・オーリックが作曲している。出演者は「青の恐怖」「ウォタルー街」のアラステア・シム、「捕われた心」のジャック・ウォーナー及びジャック・ランバート、ヴァレリー・ホワイト、映画初出演の新人ジョーン・ダウリング、少年俳優ハリー・ファウラー以下十一名のブラッド・アンド・サンダー・ボーイズ等で、ほかに三百名の少年が登場する。

1947年製作/イギリス
原題または英題:Hue & Cry

ストーリー

十五歳のジョー・カービイはあまり生計の豊かでない家庭の事情を知っているので、何か仕事をして父を助けたいと思っているが、戦後のロンドンには彼のような少年に容易に勤まる職もない。それでジョーは毎日々々彼と同年配及び年下の少年達とテムズ河岸の焼ビルの廃虚で遊び暮している。ある日教会の合唱隊に入っている年下のディッキーが持っていた週刊少年誌「トランプ」の連載スリラー小説を読んで、ジョーはすっかり興奮してしまう。友達の一人にその話をしようとして、目の前に止った黒い大型のトラックの番号札をふと見るとGZ2476と記されている。小説で読んだばかりのギャングのトラックの番号である。しかもその隣に小説に現われたのと同じ型のロードスターが並んでいる。トラックから荷物を運び込んでいるのは小さな毛皮店である。ジョーはすきをみて店に入り、荷物を調べている所を発見され、探偵に引渡される。探偵は彼の話を一笑に附し、今後を戒めて許してやる。しかしジョーはこの暗合を偶然であるとあきらめ切れず、仲間に話すと少年達も彼と同意見である。翌朝彼の家庭事情に同情した探偵が与えた紹介状を持ちジョーはコヴェント・ガーデン市場の野菜仲買人ナイチンゲールを訪れる。野菜屋の小僧になった彼は「トランプ」の小説を忘れ得ず、ディッキーと二人で出版元の表口にガン張り、そこに勤めているノーマンに例のことを話したが、彼は半信半疑である。二人はさらに小説の作者ウイルキンソンを訪ねてみたが全然創作であるという話である。ところがノーマンが出版社に勤めている女ローナが怪しいと教えたので、ジョーは数名の仲間と共に彼女の跡をつけ、住宅街の立派な家にいる彼女を襲い一つの手掛りをつかむ。その手掛りで、あるデパートに忍び込んだ少年達は大失敗を演じ、地下の下水道を伝ってようやく逃げた。しかしジョーは市場近くで、又もや小説中の自動車と同じ番号のEN20を見て、小説があるギャングの秘密通信に利用されていることを確信する。ジョーは作者ウイルキンソンを訪ね、次の号に出る終の部分を無理に書きかえてもらう。「トランプ」の愛読者であるロンドン全市の少年達はそれを読んで、ジョーの暗号の指令の来るのを待っている。密輸ギャングの首領はナイチンゲールで、例のスリラー小説が変っているのに驚き、密輸品の隠匿場所を変えようと焼ビルにギャングを召集する。その付近で張っていた少年達は合図の叫びを挙げる。ジョーは公衆電話で方々に暗号指令を発する。かけつけた数百名の少年は乱闘の末十名ほどのギャングを倒し、ジョーは自らナイチンゲールを気絶させて警察に引渡す。

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