乙女の湖
解説
「家なき児」と同じくマルク・アレグレの監督作品で原作は「グランド・ホテル」の作者ヴィッキー・バウムの小説である。主演者はいずれも我が国には初見参であるがフランスでは評判の若手のジャン・ピエール・オーモン、ロジーヌ・ドレアン、シモーヌ・シモンの三人。これを助けて老練なミシェル・シモン、「アトランティド」のウラジミール・ソコロフ、それからイラ・メエリー、オデット・ジョアイユー、アスラン、モーリス・レミー等の人々が出演している。台詞は女流作家として知名なコレット・ウィリーが執筆し、音楽には「自由を我等に」のジョルジュ・オーリックが当り、撮影は「夢見る唇」のジュール・クリュージェが、そして装置は「パリ祭」「自由を我等に」のメエルソンが夫々担任した。
1933年製作/フランス
原題または英題:Lac aux Dames
ストーリー
エリック・エレルは化学技師の免状と水泳選手の称号とを持っていたが、それだけではこの世では食って行けない。そこで彼はチロールにある乙女の湖と呼ばれた湖へ夏の間、水泳の教師として雇われる事となった。ところが彼の若々しさと美貌とはこの避暑地の女性の目を惹き、女達は彼の周りに集まって来た。エリックはある時、湖を泳ぎ切る事を思い立ったが、その途中濃霧に襲われ、パックに助けられた。パックは湖の向岸に大きな城を構えているドベルスペルク男爵の一人娘で、野のままに生い育った可愛い又不思議な性格を持った乙女であった。その日以来、パックにはエリックが忘れ難い人となったが、一方大実業家リセンホップの娘ダニーも彼に心惹かれた一人であった。漸く夏が盛りを見せた頃、エリックは偶然この地へ来た昔馴染のアニカに行き合った。アニカは今ではステレニー伯爵と名のるイカサマ師の妻という触れ込みであったが、彼女のここへ来た目的というのはリセンホップから金を引出す事であった。その内にダニーとエリックとは真剣に恋して行き、ダニーとともに舞踏会に行くためにエリックは質に入れたタキシードを出そうとしてパックから金すら借りた。だが、結局、タキシードは手に入らず、その上、イカサマがバレてアニカが彼の小屋へ逃込んで来た時は、エリックはダニーの妹カルラの助けを得てアニカを逃してやったりした。ダニーは己れがエリックを心から愛していると知るとこの地を去る前に彼を父親に引き合せて結婚の許しを得ようとした。だが、一寸した引き違いからエリックはリセンホップの怒りを買って結婚を拒絶された。そして夏が漸く終りに近ずき、この賑かだった地にも人影がまばらになった頃、一文の貯えもなくなったエリックはアニカを助ける際に受けた腕の傷が悪化し体さえ弱っていた。彼は淋しさに堪え難く久振りにパックを訪れたが、その時にパックの恋にふと応じた事が男爵の目にとまり、以来出入りを禁止されてしまった。だが、夏の終りの雨もよいの日、ダニーを想って床上に転々していた彼を訪れたのはパックで、彼女は彼に苦しい胸を打開けた。エリックがそれを拒絶すると彼女は去って行ったが、その後彼女の行方知れぬと聞いて人々が湖水を捜索した時、エリックもその群に加わって水に一命を落した。だが、実はパックは生きていたのだった。しかし、それからは湖に小舟をあやつって歌う彼女の歌声もわびしげに聞えた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- マルク・アレグレ
- 原作
- ビッキー・バウム
- 台詞
- コレット・ウィリー
- 撮影
- ジュール・クリュージェ
- リボウ
- セット
- ラザール・メールソン
- 音楽
- ジョルジュ・オーリック