花咲く頃

解説

テナー歌手として名高いリヒャルト・タウバーが主演する歌謡映画で、オペレットの『三人の娘の家』を基として「狂乱のモンテカルロ」のフランツ・シュルツが書卸したものをシュルツがイギリス劇作家のジョン・ドリンクウォーター、ロージャー・バーフォード及びG・H・クラッサムと共同脚色し、監督には「魅惑を賭けて」「帰って来た恋人」等を在米時代に作ったポール・L・スタインが当り、撮影はドイツから来たオットー・カントレックがブライアン・ランガレイと共同担任した。助演は「復活」に出演しているジェーン・バクスター、カール・エスモンド、「ユダヤ人ジュス」のポール・グレーツ、アシーン・セイラー、ギブ・マクローリン等の面々である。

1934年製作/イギリス
原題または英題:Blossom Time April Romance

ストーリー

一八二〇年のウィーンである。酒と歓楽とに浮れたこの都は楽聖シューベルトの唄を口ずさみながらシューベルトその人には何の尊敬も払わなかった。だからシューベルトは貧しかった。ダンス教師の二階を間借して小学校に教鞭を取りながら泉の如く湧出る楽奏に耽っていた。或夜この家に時ならぬ客が訪れた。それは立派な近衛兵で三十分間でワルツが習いたいという。彼等のパトロンである侯爵夫人が殊の外ワルツが好きで今も士官が一人一人お相手させられているのであるが、自分は地方に長く居た為め今流行のワルツを知らない。自分の番が来るまでに踊れる様にしてくれとの無理な注文である。その夜を縁に士官とダンス教師の娘ヴィッキーとはよく一つ馬車に乗って郊外を走らせた。小学生をつれて散歩に出かけたままに彼等に会ったりするとシューベルトは黙々としてしおれてしまう。シューベルトの為に友達が集まって彼の作品発表会を開き、有名な唄手も呼んでくれた。しかし当日になると歌手は風邪を引いて声が出なくなっていた。途方に暮れた友達はシューベルトを無理に舞台に立たせた。彼は観客の怒号する中で泣きたそうな顔をしながら歌い始めた。しかし彼の声は立派で歌は美しいメロディだった。怒っていた観客はいつか静まり、水を打った様に聞きとれていた。翌日シューベルトの名はウィーン中に轟いていた。しかし彼はそんな事よりヴィッキーに彼を認め愛して貰いたかった。しかし彼女は風采の上らぬ彼よりも士官を愛していたのであった。シューベルトは美しく自分の恋をあきらめ、永遠に愛するヴィッキーのためにあらゆる力を尽して士官との結婚を進めてやった。そして彼等の結婚式が教会で行われる時、シューベルトは彼等のために壮厳なミサを歌ってやったのである。

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