トト
解説
「プレジャンの舟唄」「幻の小夜曲」のアルベール・プレジャンが主演する映画で、新人ジャック・ターナーが監督した作品である。原作はヘルマン・コステルリッツの書卸したもので、それを「靴屋の大将」「ミルトンの与太者」のルネ・ピュジョールが映画用に脚色した。助演者は新進女優ルネ・サン・シールを始めとして「プレジャンの舟唄」のジム・ジェラルド、それから、舞台のフェリックス・ウーダール、グーピルの人々である。撮影はレイモン・アニェル、ルネ・コラ両氏の担当で、なおジャーヌ・ボスが作曲している。
1933年製作/フランス
原題または英題:Toto
ストーリー
トトとキャロットは巴里の与太者ルンペンで飼犬を掻払ってはそれを元の持主に売りつけたり、そんな事をして呑気に陽気に暮していた。が、或る時、巡査に追馳けられたトトが逃げ場に困って飛び込んだ室というのがジネットという若い娘の部屋だった。このジネットは元来タイピストなのであるが、当時どこも不景気でこの間じゅうずっと失業し、部屋代すら六ヶ月もたまっていた。所が、このジネットの部屋に男が居たというので、下宿の上さんが散々ジネットを怒鳴り散らした。で、居たたまらなくなった彼女はトトの誘うが侭に其所を追ン出て、トトの部屋に移り住む事となった。で、それからトトとジネットとがトトの一間しかない室で数日間の友人的生活が続いたのだが、運悪くトトは彼を追かけていた巡査にまた発見されて、刑務所に放り込まれてしまう。この刑務所内でトトはブリューノという大男と知り合った。このブリューノは大実業家なのだが詐欺をしたというので投獄されているのである。で、このブリューノは獄内でトトに一塊のパンの情けに預ったので出獄した暁は彼に大いに御馳走もしようし事業も提携して助力してやると約束したのだった。だが、さて二人が同時に出獄するとなった時、ブリューノはトトの事なぞ全然に構いつけなかった。が、そんな事ではトトはひるまなかった。彼は己れの帰りを持っててくれたジネットを励まして今後は正業につこうとし、先づ手近な金儲けとして折から開かれた美人投票選抜会にジネットを出場せしめた。するとジネットは美事一等の栄位をかち得、売金五万法を手にしたが、ここに又もやブリューノが現れて二人の間を疎隔し、トトには相手が金持になった以上は身分を考えて恋を諦らめろと云った。そう云われれば尤もな話で、トトは悲しく恋を諦らめて、つけ元気に口笛吹いて己れの汚ないアパートの一室に帰って行った。が、一方ジネットとてトトの事は思い切れず彼女は先廻りして其所でトトの帰りを待ちわびていたのである。で、巴里の屋根の下ではまた恋が咲いたのであった。