旅路(1974)

解説

厳しい封建制度に支配されていた今世紀初頭のシシリー地方を舞台に、古い因習に縛られた男女の愛を描くヴィットリオ・デ・シーカ監督の三十本目の作品。製作は「アラビアンナイト」のカルロ・ポンティ、著名な作家であり劇作家であるルイジ・ピランデルロの原作を、ディエゴ・ファブリ、マッシモ・フランシオーサ、ルイザ・モンタニャーナが共同脚色、撮影はエンニオ・グァルニエリ、音楽はデ・シーカ監督の長男に当たるマヌエル・デ・シーカ、編集はキム・アルカッリが各々担当。出演はソフィア・ローレン、リチャード・バートン、イアン・バネン、バーバラ・ピラビン、アナベラ・インコントレラ、パオロ・レナなど。

1974年製作/イタリア
原題:The Voyage

ストーリー

一九〇四年のシシリー島。広大なオリーブ農園を経営する町一番の大金持で由緒ある名門のブラッジ家の広間に、召使いや親しい友人が呼び集められていた。数日前に亡くなったこの家の主フェルジナンド・ブラッジの遺言状が公証人によって読み上げられようとしていた。家政婦のクレメンティナ、主治医マスチオーネ、農園管理人リナルド、そしてブラッジ家に残された二人の兄弟チェザーレ(R・バートン)、アントニオ(I・バネン)がこれを聞いていた。公証人は最後に一通の故人の手紙を長男チェザーレに渡した。町の小さなアパートにデ・マウロという未亡人(B・ピラビン)が娘のアドリアーナ(S・ローレン)とひっそりと暮していた。アドリアーナのもとには良い縁談がいくつも寄せられていたが、幼な友達で以前から心を通わせているチェザーレがいつか結婚を申し込んでくれるだろうと心待ちにしている彼女はそれらをすべて断わり続けてきたのだ。遺言状が発表された数日後、チェザーレはアドリアーナを訪れた。確かに結婚の申し込みではあったが相手はチェザーレではなく弟のアントニオだという。アドリアーナを愛するチェザーレは心の苦しみを隠しながらそそくさと帰っていった。当然、アドリアーナはこの申し込みを断わったが、老い先短かい母に厳しく叱責され運命に従った。アドリアーナとアントニオの結婚式がすむと、チェザーレは商用と称して旅に出ることが多くなり、家には居つかなくなった。歳月が流れ、二人の間に生まれた子は五歳になった。ある日、久しぶりに邸に戻ったチェザーレは素晴らしいオープン・カーをアントニオにプレゼントした。チェザーレが再び旅に出たあと、アントニオはひとりでドライブに出かけた。だが、山道で急カーブを切りそこね、崖から転落、アントニオは死亡した。その頃、シシリーでは夫に先立たれた女は、長い間、喪服に身を包むことを強いられていた。病弱だったアドリアーナはますますやせ細り、彼女の健康が衰えてゆくのを心配したチェザーレは、パレルモの専門医のもとに彼女を連れていった。診察の結果、心臓が弱っていてもう手遅れだと医師はいう。アドリアーナは自分に死の宣告が下されていることを感じていた。故郷へ立つ日、彼女はチェザーレにいった。“私を遠くに連れていって”永年抑圧されていた二人の愛は、今甦りチェザーレは彼女を抱きしめた。だが、ベニスに着いたときアドリアーナの弱った心臓が発作を起こし、息断えた。彼女の旅は、愛する男の腕の中で終わったのだ。

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