新しい人生

劇場公開日:

解説

オバールの海辺の貧しい漁村を舞台に、漁民の生活とアンゴラの植民地戦争の暗い背景を描く。製作はアントニオ・クニャ・テレス、脚本・監督はパウロ・ローシャ、台詞はアントニオ・レイス、撮影はエルソ・ローク、音楽はカルロス・パレーデス、編集はマルガレータ・マンクス、監督助手はフェルナンド・マトス・シルバが各々担当。出演はジェラルド・デル・レイ、マリオ・バロッソ、イザベル・ルス、ジョアン・ゲーデス、コンスタンサ・ナバーロ、マリオ・サントスなど。

1966年製作/ポルトガル
原題または英題:Mudar de Vida
配給:エキプ・ド・シネマ
劇場公開日:1980年3月2日

ストーリー

オバールの貧しい漁村フラドロ。村の男たちは、荒々しい海で鰯船をあやつり、女たちは砂を運びながら彼らの帰りを待っていた。このオバールの海岸に、アンゴラの植民地戦争に行ったまま行方知れずになっていたアデリーノ(ジェラルド・デル・レイ)が何年ぶりかで帰って来た。兵役が終った後、アフリカで働いていた彼は、かつての婚約者ジュリア(マリオ・バロッソ)に会いたい一心で、この荒れ果てた小さな村に帰ってきたのだ。しかし、ジュリアは、すでにアデリーノの兄と結婚し2人の子供の母となっていた。しかも、彼女は疲労がもとで、長い間心臓を患っていた。翌朝からアデリーノは海に出て、再び海の男として生きる決心をしていた。祭りの夜、海辺には若い男や女たちが疲れを忘れて歌い踊る。彼らの中にはアデリーノ、ジュリア、そして彼女の夫もいた。しかし、戦争で背中を負傷しているアデリーノにとっては海の仕事は苛酷すぎ、ジュリアヘの思いを断ち切るためにも再び家を出ていく決心をする。ある日、アデリーノが教会の片隅で寝ていると、そこに若い女が献金を盗みにきた。彼女は、アルべルチア(イザベル・ルス)といい、世間の噂を気にせず、自由勝手に生きる女だった。アデリーノは、いつしか彼女に惹かれていった。そんな時、ジュリアが心臓発作を起こし、容態は悪化していった。夫が彼女のために安全な家を手に入れた矢先のことだ。一方、アデリーノは、アルべルチアと、貧しいが、希望に満ちた新しい人生を迎えようとしていた。

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映画レビュー

3.5貧しい漁村をリアリズムで描いたポルトガル映画の佳作

2021年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

兵役中に婚約者を実兄に取られ、それでもなお彼女に想いを寄せるアデリーノが主人公の、素朴な愛をテーマにしたポルトガル映画。ローシャ監督の演出は前作以上の冷静で確かなものを感じさせる。特にクラドロという貧しい漁村をドキュメンタリー手法で撮影した荒々しいタッチは、そのまま海に生きる人々の生活感を漂わす。当時の農林大臣が、あまりにも貧しい漁師の生活の表現にクレームを付けたというエピソードも頷けなくもない。このリアリズム表現は、ヴィスコンティの「揺れる大地」を想起させる。後半は、アルベルチアという自由な生活信条を持つ若い女性が現れ、恋の虚しさにいたアデリーノに新しい活力を注いでいく。丁寧で落ち着いた作者の視点は、寡黙で取り立てて主張はしないが、その語りの肌触りが充分伝わってくる佳作だった。   1980年 4月25日  岩波ホール

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Gustav