モンスター・イン・ザ・クローゼット

劇場公開日:

解説

突然、小さな町に出現したモンスターと軍隊の死闘を描くSF・ホラー・コメディ。脚本・監督はボブ・ダーリン、製作はデイヴィッド・レヴィーとピーター・L・バークィスト、エグゼクティヴ・プロデューサーはロイド・カウフマンとマイケル・ハーツが担当。出演はドナルド・グラント、デニス・ドュバリーほか。

1985年製作/アメリカ
原題または英題:Monster in the Closet
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1987年11月7日

ストーリー

サンフランシスコの大新聞社の記者リチャード(ドナルド・グラント)は、郊外の辺ぴな町チェスナット・ビルで発生した3つの“クローゼット殺人事件”を取材するよう命令され現地にとんだ。彼はすぐに保安官ケッチャム(クロード・エイキンズ)、大学で生物学を教えるダイアン(デニス・デュパリー)と共に殺人現場のデルタ・ファイ・ビー女子大学へ向かう。折りしも隣りの家ではマーゴ(ステラ・スティーヴンス)がシャワーを浴びている最中に夫のロイがモンスターに襲われる。その夜は大勢の住民がクローゼットからやって来たモンスターに襲われ、町は大パニックに陥った。大統領は国中に非常事態を宣言、戦車、バズーカ砲、ミサイル装備の軍隊を派遣した。指令官F・D・ターンブル将軍(ドナルド・モファット)は“教授”のニックネームを持つダイアンの息子を救出すべく攻撃命令を下した。使わなかったのは核兵器だけという激しいものだったがモンスターは無キズだった。ダイアンはモンスターに電気を通し、電子のスピードを上げることによって殺せるかも知れないと将軍に提案、リチャードとダイアンは精巧な電気装置を作り出し罠を仕掛けるが役に立たなかった。リチャードは教授が作ったエネルギー増大器を作ることにした。そしてついにクローゼットに逃げ込めなくなったモンスターは自滅していった。

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映画レビュー

4.5過去を裏切り 受け手を裏切り

2022年9月25日
iPhoneアプリから投稿

クローゼットから突如現れた化け物がアメリカ中を恐怖のどん底に陥れるZ級パニックホラー。溢れ出んばかりのトロマ臭がすると思っていたら案の定ロイド・カウフマンが制作に絡んでいた。

そもそもこういう類のモンスターパニック映画というのは化け物の造形がよければそれだけでもう及第点なのだが、本作はグロテスクで魅力的なモンスター造形を凌ぐほど物語が面白い。

序盤の『サイコ』のパロディシーンを見ればわかる通り、本作はホラーというジャンルに対するシニカルなメタを物語の基調としている。ただ、それは単に映画の既存コードをそのままひっくり返したような単純なものではない。

『サイコ』のパロディシーンでいえば、まずシャワーを浴びている女に怪しい影が忍び寄る。そして勢いよくカーテンが開く。するとそこに立っていたのは彼女の夫だった。これだけであれば『サイコ』の「ひっくり返し」でしかないが、本作ではこのやりとりがあと2回続く。しかも結局最後までカーテンの向こうから化け物は現れない。それどころか、化け物に襲われるのは夫のほうなのだ。

登場人物の人物像に関しても同様のことがいえる。非科学を認めない堅物で、息子のヴィーガン教育に熱心な生物学教授の女や、ややマッドサイエンティストじみた天才老博士など、いかにもB級ホラーの餌食役におあつらえ向きな人々が多いのだが、彼らが辿る運命もまた我々の予想をスルリとすり抜ける。生物学教授の女は主人公のよきパートナーとなり化け物退治に尽力するし、老博士は化け物との対話に失敗して命を落としてしまうものの、主人公たちに化け物退治の有効なヒントを残す。

極め付きはぶっ飛んだオチだ。これを予想できた人はおそらくいないんじゃないかと思う。おおかたの人が生物学教授の女の息子が造った音波増幅装置で撃破が関の山だろうと踏んでいたのではないか(私もそうです)。

そもそもこういう類のバカバカしいモンスターパニック映画はタイトルやプロローグで「どういった状況下でどういったことが起きるのか」を丁寧に概説しつつも中盤以降はそれらの設定はほとんどなかったことにしてメチャクチャやるというのがお約束だ。しかし本作はむしろ当初の問題設定に回帰する。

化け物にはいかなる武器も効かない。しかも神出鬼没で場所の特定ができない。そのとき生物学教授の女は老博士の遺言を思い出す。「全てを壊せ」。何を?それはもちろんクローゼットだ。本作のタイトルを思い出してほしい。『モンスター・イン・ザ・クローゼット』。この化け物はクローゼットが存在するがゆえに存在している。すなわち世界中のクローゼットを破壊すれば化け物は衰弱するに違いない。メチャクチャな論理ではあるのだが、「押入れの中の怪物」という主題を忘れていたのは我々も同じなので反論するにもばつが悪い。

「起きていることをありのまま受け止めるのです。そして世界中のクローゼットを一つ残らず破壊するのです」と民衆に語りかけるのが、かつて科学信仰者だった生物学教授の女から発せられるというのもいい。

そんでもってこのオチさえも二段構えになっている。化け物は終盤でなぜか主人公をさらっていくのだが、その理由が最後に明かされる。それは主人公の顔が美しかったからだ。化け物はさっさと異次元にでも逃げ込めばよいものを、主人公にかかずらっていたせいで脱出の機を逃し、そして自滅した。

「科学や宗教といった合理主義」vs「目の前の現実をそのまま受容する非合理主義」という等式がようやく析出したかと思いきや、暴力的なまでに圧倒的な美なるものがそれらを一切合切破壊し尽くすというとんでもないピリオドの刻み方だ。

シニカルなメタ映画としての矜持は保ちつつも、受け手にやすやすと消費させない変幻性を秘めたメチャクチャ出来のいいZ級映画だった。こういうのがごくたま~~~にあるからクソ映画発掘はやめられない。

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因果

3.0『後に名を成す方々のいたいけな姿』

2019年6月2日
PCから投稿

笑える

単純

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瀬雨伊府 琴

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