「鳥が恐ろしくなった」鳥 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
鳥が恐ろしくなった
DVDで鑑賞(吹替)。
原作は未読。
ある日、鳥が人類に牙を剥く。理由も分からず、成すすべも無い。突如、無数の殺意に晒されると云う理不尽な恐怖。…
アルフレッド・ヒッチコック監督がお得意のサスペンス描写でスリリングに描き出す、動物パニック映画の名作である。
冒頭からしばらくは、メロドラマでも始まるのかと訝しく思うくらい、メラニーとミッチが惹かれ合う様子を、ミッチの母親や元恋人アニーとのやり取りを交えながら描いていく。
少し退屈な時間だったが、なんの変哲も無い恋愛劇に、メラニーがカモメにつつかれたり、アニーの家にカモメがぶち当たって憤死するなど要所要所で不穏さを醸し出す演出が見事。
中盤以降は鳥の襲撃がどんどんエスカレートしていって、ついには死者が出てしまう。そして、小学校がカラスの大群に襲撃されると、小さな港町は次第に恐慌状態へ突入していく。
(煙草を吸うメラニーの背後のジャングルジムに1羽、2羽…とカラスが止まり、彼女が気づいて振り返ると無数のカラスが止まっているシーンはあまりの不気味さに鳥肌が立った)
じわじわと不安を煽っておいてから迎える、カモメの大襲撃が本作のハイライトだろう。住民たちは一挙にパニックに陥った。ガソリンスタンドが爆発し、人人は鳥に殺害される…
パニック時の集団心理は、この理不尽な事態に理由を求め、メラニーへ責任追求の矛先を向ける。理解出来ないままでは怖いからだ。メラニーに詰め寄った主婦は鳥より怖かった。
鳥の襲撃に波があるのも恐怖を煽る。何故急に止むのか。何故今は襲い掛かって来ないのか。その理由も分からない。分からないことだらけが、さらなる恐怖を生み出していく。
ラストシーンの衝撃も凄まじい。何も解決せず、鳥の群れを映し出して唐突に終わる。なんと秀逸なプロットだろう。ヒッチコックの巧みな演出も相まって、恐怖が余韻として残る。
本作を観てから、鳥が木に群がっていたり電線に並んで止まっているのを目の当たりにすると本作を連想し、目を伏せて遠ざけるようにしている。とにかく鳥が恐ろしくなった。
[以降の鑑賞記録]
2024/12/08:Blu-ray(吹替)
※リライト(2024/12/08)