東京上空三十秒

劇場公開日:

解説

太平洋戦争中、昭和17年4月18日、日本初空襲を試みたドゥリトル麾下のB25爆撃隊の行動を描いたもの。この奇襲爆撃行に参加したテッド・W・ローソン大尉の手記と、同行の新聞記者ロバート・コンシダインの手記を原作に、ダルトン・トランボが脚色「ロケットパイロット」のマーヴィン・ルロイが監督、撮影も同じくハロルド・ロッソン。音楽はハーバート・ストサート。主演は、「山」のスペンサー・トレイシー、「脱獄囚」のヴァン・ジョンソン、「見知らぬ乗客」の故ロバート・ウォーカー、「外国の陰謀」のロバート・ミッチャム、「スプリングフィールド銃」のフィリス・サクスター、「夜の億万長者」のドン・デフォー。

1945年製作/アメリカ
原題または英題:Thirty Seconds over Tokyo
配給:ブレイクストン=映配共同
劇場公開日:1957年5月21日

ストーリー

太平洋戦争開始直後、ローソン中尉(ヴァン・ジョンソン)はB25を主体とする秘密作戦に志願した。彼は半年前に結婚した妻のエレン(フィリス・サクスター)と別れ秘密作戦の基地エグリン島におもむいた。秘密保持の厳重な警戒のうちにローソンら志願者は、ドゥリトル中佐(スペンサー・トレイシイ)の命令のもと奇妙な訓練を始めた。普通1500呎の距離を時速90哩で離陸するのがB25の規定であるにも拘らず、今度の訓練では僅か500呎以内を時速50哩で離陸というものであった。訓練が完成に近づいたある日、ローソンのもとへエレンが会いにきた。が数日後の深夜、ローソンらに出動命令が下った。副操縦士のダヴェンポート、航空士のマクルア、射手のサッチャー、爆撃手のクレヴァから成るローソン機は、他のB25の一隊とともにサンフランシスコを通ってアラメダ海軍飛行場へ低空飛行の練習をしながら飛んだ。一行は、そこから航空母艦ホーネットにB25を乗せ、秘かに出航した。翌日、洋上の一行に、この秘密作戦の全貌が初めて明らかにされた。B25をもって日本の大都市に奇襲攻撃を加え、機は大陸へ逃れるという計画である。日本を目指して進むホーネットは遂に運命の日、昭和17年4月18日を迎えた。この朝、ホーネットは日本の見張船に発見され、B25の一隊は直ちに飛び立つことになった。ドゥリトル機を1番機に、次々と日本に侵入した。7番機のローソン機は富士山を左に見ながら東京に侵入したが、余りの奇襲に東京の街は誰も気づく者がなかった。全弾を工業地帯に投下したローソン機は中国大陸へと向かった。ところが突然のスコールに機は動揺、大陸沿岸真近で海中に墜落した。乗員は辛うじて海岸へたどりついた。ローソンは片足に負傷したが無事、中国を経てアメリカに帰ることができた。その彼を妻のエレンが優しく迎えた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第17回 アカデミー賞(1945年)

受賞

特殊効果賞  

ノミネート

撮影賞(白黒) ロバート・サーティース ハロルド・ロッソン
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映画レビュー

5.0爆撃されているのは東京なので複雑な気分ですが、戦争映画としては素晴らしいシーンになっています

2020年10月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは傑作
ドゥーリットルの東京初空襲の物語
主人公はその指揮下の爆撃機の機長
2020年日本公開のエメリッヒ監督版ミッドウェーでも序盤に描かれていたエピソードです
ミッドウェーでは本作の内容がごくシンプルに要約されています

戦時下の製作で戦意高揚映画とされていますが、主人公が傷痍軍人になったりしますし、日本人をことさら敵視もしていません

東京初爆撃にあたり、軍需施設を狙うがそこで働いている民間人も死ぬことになる、それが嫌なら出撃を辞退してよいと指揮官から話をするシーンもでてきます
東京大空襲で都市野無差別爆撃をして11万人もの死者をもたらしたのは、本作の本国での公開4ヶ月後のこと
本作の時点では米国もまだ正気が保たれていたということかも知れません

本作は戦意高揚の要素よりも、敵の心臓部に大胆不敵な殴り込みをする冒険と、戦争の辛さ、そして人間らしい生活の有り難さ、夫婦愛の強さの方に焦点が当てられています
それらを上手なバランスと配合でまとめ上げてあます
さすが映画職人のマーヴィン・ルロイ監督です
大変面白く見応えがあります

とにかく、酒の席での冗談みたいな発想の作戦を本当にやってしまう肝っ玉の太さ!
ヤンキー魂恐るべしです
この無茶な作戦が、日本を逆上させミッドウェー作戦を実行させ、その結果逆転の糸口を作ったことは間違い無いことです

同じ事は日本人には発想しえても冗談で終わるだけだと思います
代わりに日本人が発想し実行したのは神風特別攻撃隊であったわけですが
国民性の違いとは言えなんか複雑です

東京上空シーンは本当に三十秒といことは無いですが、数分も有りません
哨戒機に空母が発見されて急遽発艦するところからの、超低空侵入シーンは手に汗を握るものです
房総半島を横切って東京湾から京浜工業地帯を爆撃します

空母からの発艦シーンで、主人公の爆撃機が発艦後飛行甲板よりも下に沈み込んで一瞬見えなくなります
心配した刹那、姿を見せて高度をあげていきます
同様のシーンはトラトラトラが有名ですが、本作が元ネタだったようです

房総半島の梢をかすめていく農村部の光景はどう観ても米国の光景です
東京上空から見下ろす臨海部の工場地帯の街並みは、なんとか化工株式会社の看板が見えたりして東京に見えなくも無いものです
爆撃シーンは、大迫力です
爆撃されているのは東京なので複雑な気分ですが、戦争映画としては素晴らしいシーンになっています

空母のシーン、併走する護衛の艦隊の距離感などもなかなか描写も良く、軍事マニアも納得です

爆撃機を扱った戦争映画は数多くありますが、その中でもかなり良い部類だと思います
超低空での敵地侵入爆撃ミッションは「暁の出撃」と類似しますが、それよりも無茶さがありハラハラドキドキさせられました

エメリッヒ監督版ミッドウェーの冒頭で登場する米国大使館の海軍武官達の一人と覚しき人物が本作に登場して爆撃目標を示します
エメリッヒ監督はかなり本作を参考にしていたようです

エメリッヒ監督版ミッドウェーで中国のシーンが長い!反日だ!とか言う人もいるようですが、本作の中国のシーンの長さがその由来かも知れません
本作では、後半まるまる中国に不時着してからの物語であったかのような印象があります

この中国は中華民国、今の台湾の中国です
今の中国の中国共産党軍つまり八路軍は出て来ないことに留意していただきたいと思います
そこを混同しているから、反日だとかトンチンカンな受け取り方をされているのだと思います
元ネタの本作を観れば分かる話です

戦争映画の傑作です
もっと高く評価されて良いと思います

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あき240