虚栄の市(1935)

解説

「クカラチャ」を製作したパイオニア映画社が作った最初の総天然色長篇映画で、原作はラングドン・ミッチェル作の舞台劇「ベキー・シャープ」である。脚色は「ニューヨークの仇討」のフランシス・エドワーズ・ファラゴーが当り「クリスチナ女王」「恋の凱歌」のルーベン・マムリーアンが監督した。色彩デザインは「クカラチャ」と同じくロバート・エドモンド・ジョーンズが受持ち、「クカラチャ」「肉の蝋人形(1933)」のレイ・レナハンがナタリー・カルマスの色彩指導のもとに撮影した。主演者は「世界一の金持娘」「彼女は僕を愛さない」のミリアム・ホプキンスで、「若草物語(1933)」「痴人の愛」のフランセス・ディー、「南欧横断列車」のセドリック・ハードウィック、「昨日」のビリー・バーク、「海を嫌う船長」のアリソン・スキップワース、「化石人間」のアラン・モーブレイ、「宝島(1934)」のナイジェル・ブルース、「彼女の家出」のG・P・ハントリー・ジュニア、コリン・タップリー、ジョージ・ハッセル等が助演。

1935年製作/84分/アメリカ
原題:Becky Sharp

ストーリー

ベキー・シャープは給費生として女学校を卒業し、同窓の親友アミリア・セドリーの家に寄寓する。彼女はアミリアの異母兄ジョゼフを魅惑し、彼に結婚を申し込ませるように仕向けたが、土壇場で彼の家族の反対に遭い、セドリー家をとび出す。次でビット・クローリー卿邸の家庭教師となり、卿自身、長男ビット、次男の陸軍大尉ロードン、3人の心を捉える。彼女はロードンを口説いて、彼の叔母に当る大金持ちの老嬢の同伴者に彼女を雇わせる。そしてロードンと秘密裡に結婚するが、彼の父が彼女に結婚を申し込む意思があった事を知って悔やまねばならなかった。老クローリー嬢はベキーの美貌と才智に好意を寄せたが、ロードンが彼女と結婚していると知るや、身分の低い娘と結婚した愚者と怒って勘当する。お蔭でベキーは夫と共に無一文となったが、彼女は美貌を元手に賭博を始めて贅沢に暮らす。中でもアミリアの夫のジョージ・オズボーンはベキーに想いを寄せ、掠島となったのである。其頃ナポレオンがエルバ島を脱出したので、ロードンやジョージが属する連隊はウェリントン卿の旗下となり白耳義へ行く。ベキーは夫に従ってブラッセルへ赴き、社交界の花形となる。そして彼女の美貌は侍従のステイン侯爵の心を惹いた。ウォータールーで英軍は勝利を得たがアミリアの夫ジョージは戦死を遂げる。ベキーはロンドンへ帰ってからはステイン侯爵の引立てで、益々名高くなったが賭博にイカサマ骰子を使ったのがばれる。彼女は侯爵にすがって急場を糊塗しようとする。侯爵は巻き上げた金を被害者に返済すれば事件を揉み消してやると云う。ベキーは色仕掛けで金を返すまいと努める。そこにロードンが帰って怒り彼女を罵り侯爵を殴る。此の結果ベキーは離婚され、社交界から蹴落され、怪しげな酒場の唄い女となる。それを知ってアミリアは彼女を引取ろうとする。アミリアの求婚者ダビン大尉はベキーを救うなら結婚せぬ、と云う。ベキーは、アミリアが操を立てている死んだジョージがベキーに宛てた恋文を見せてアメリアの眼を覚まし、真に彼女を愛するダビン大尉と結婚なさい、と勧める。そしてベキー自身はアミリアの異母兄のジョゼフと面白可美しく暮らすこととなる。

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