悪魔スヴェンガリ

解説

「クラック将軍」「海の巨人(1930)」につぐジョン・バリモアの主演映画。原作はジョルジュ・デュモリエの小説で「クラック将軍」「海の巨人(1930)」のJ・グラップ・アレクサンダーが映画脚本に組み立て「流行の寵児」「地獄の一丁目」のアーチー・L・メイヨが監督し、「恋の勝ち馬」「踊り子をめぐりて」のバーニー・マクギルが撮影に当たった。助演者は無名より抜擢されたマリアン・マーシュ、「千万長者」のプラムウェル・フレッチャー、「異教徒」のドナルド・クリスプ、「四つの壁」のカーメル・マイアース、ラムスデン・ヘーア、ルイ・アルバーニの面々である。

1931年製作/81分/アメリカ
原題または英題:Svengali

ストーリー

スヴェンガリというのは、ゲッコという手下のヴァイオリン弾きとパリのラテン街に住む貧乏な一音楽教授であるが生来彼は人を魅する不思議な魔力と残忍性とを備えている男であった。弟子の1人でオノリという女がスヴェンガリの魔力にひかれ、彼と暮らしたい一心から良人を捨てて来た時など彼は女に一銭の蓄えもないことを知るや直ちに追い出してしまったほどである。ある時、近くの下宿にタフィ、ビリーなど若い画家たちを尋ねた折りスヴェンガリはモデルを志願する可憐な娘のトリルビーに合った。その後、唄の好きな彼女が頭痛になやんでいるのを催眠術で癒してやってからスヴェンガリはトリルビーを自分の意のままに動く被催眠者にしてしまった。そして夜な夜な彼女はスヴェンガリの暗示を受けて彼の宿へ引き寄せられるのであった。こうする内にトリルビーはビリーと恋仲となったが1日自分が裸体でモデル台にたっているのをビリーに見つけられ恥かしさの余り戸外に走り去った。その純真さに打たれたビリーは彼女と結婚するべく決心をしたが時既に遅く彼の下宿の机には彼女からの別れの手紙が発見された。そこで彼は恋人の行方を百方たずねたが彼の元へもたらされたものは河岸に脱ぎ捨てられてあったという彼女の衣類だけであった。トリルビーは自殺したとしか思えなかった。ある夜こっそりパリの停車場から彼女を連れて旅に出るスヴェンガリに気がついたものは1人もいなかった。5、6年の月日がすぎてパリに再び帰って来たスヴェンガリは音楽会を開いた。昔馴染みの懐かしさからビリーはタフィ等を相伴って小屋に押しかけ演奏の終了後、楽屋口でスヴェンガリを待っていると意外や彼の後ろから死んだ筈のトリルビーが現れた。この時、驚きの余りスヴェンガリが気を失いかけたため魔力を解かれたトリルビーはビリーたちの所へかけよって来た。だがスヴェンガリが間もなく正気づくと同時に彼女の精神状態は再び朦朧となり再び彼らから離れ去った。トゥリルビイの占有を害されたくないスヴェンガリはすべての音楽会を断り、パリを去って行った。スヴェンガリの魔力はその後めっきり弱ってきたためにさしもの魔力も日一日と微弱なものとなって行った。田舎街のコーヒー店でトリルビーが唄っていた。ずっと彼女を探し続けていたビリーが偶然そこに来合わせた。スヴェンガリはこの上はトリルビーに自分たち2人の何方かを選ばせようと申し出たが、この時積もる身心の打撃に彼の気息は萎えていた。ビリーはトゥルビーが再び自分の手に近く帰ることを悦んだ。しかしトリルビーはいつまで立っても意識を取り戻さなかった。彼女が己が魔力に封じられ、永久に他の男の手に渡らぬことを知るとともにスヴェンガリは満足の笑みを洩らして死んでいくのであった。

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