劇場公開日 2012年11月3日

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黄金を抱いて翔べ : 映画評論・批評

2012年10月31日更新

2012年11月3日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

映画らしい興奮で満腹にさせる犯罪映画の傑作

1990年の高村薫(「高」ははしご高)のデビュー作を雑誌掲載時に読み、以来ずっと映画化したいと思っていたという井筒和幸監督が、本当に「満を持して」という感じで実現した、犯罪映画の傑作である。

井筒の映画は、都市の、まちの、市民生活のいれものとしての平常のそれとはちがった異相をうつし出す。それはガキたちの帝国であったり、少年愚連隊の戦場であったりすることもあるが、前作「ヒーローショー」(10)やこの映画のように、市民たちのまちという(多数の幻想によって成り立っている)風景から、うす皮1枚だけ外に出て眺めたような、ひやりと暴力的な眺めであることもある。こういう、ひやりとさせるものを感じたのは、「ガキ帝国/悪たれ戦争」(81)の住宅街が最初だったと思うが、最近の2作では、このうす皮1枚外からの眺めが、完全に自分の手のものになっている。映画作家としての円熟であることはまちがいない。

銀行の地下金庫に保管されている金塊を強奪する男たちを描く、極めてストレートな強盗映画だ。浅野忠信妻夫木聡が首謀者で(いまの日本映画の主演俳優で最高の二人の共演だ!)、銀行の内部事情に詳しいシステム・エンジニアの桐谷健太、元エレベーター技師の西田敏行、北朝鮮の工作員として日本に来たチャンミン(東方神起)、そして浅野の弟の溝端淳平が仲間に加わる。

左翼過激派の地下活動とのしがらみがある妻夫木、国家から裏切り者として追われるチャンミンなど、6人それぞれの過去と現在の事情もからみながら、強盗計画を推進していくドラマは多層的でスリリング。

強盗計画そのものの描き方も本格的で、最後までサスペンスが途切れないどころか、増量されていく。映画らしい興奮で満腹にさせる1本だ。

(宇田川幸洋)

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