「全部、桐島のせいだ。」桐島、部活やめるってよ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
全部、桐島のせいだ。
超今更ですが、邦画の大傑作を初鑑賞。
桐島が部活を辞めたことから始まる青春残酷物語。
桐島が部活を辞め、消えた日々をそれぞれの視点で描いていく。
最高で最悪の青春ムービーでした。
学校って色んな人がいますよね。
自分の身近にもいた、そんな色んな人がそっくりそのまま映画に出演しているかのようでした。
彼氏彼女でワイワイやっている一軍、部活一筋のスポーツバカ、一軍に合わせて付き合っている人、自分からは言わないけれど人一倍想いを抱えている文化部、一軍クソ喰らえオタク、好きなことに一生懸命なカースト底辺。
陰キャ・陽キャで片付けられない、それぞれがそれぞれの思いで学園という箱の中で生きている。
普段はそれぞれがなんとなくまとまっているけれど、(本作では)桐島がいなくなるというある一つ出来事によって、それまでなんとなく合っていた波長が崩れ、微妙な温度差が生じてくる。
そういった互いの波長のズレや運動部と文化部の間の見えない壁が驚くほどリアルに描かれていて、この数日間を彼らとともに過ごしたかのような没入感を体感することができました。
またとにかくリアルで、それぞれの視点で同じ場面が何度も繰り返される印象的な進み方によって、それぞれの視点で一つの世界を眺められてしまうのがとても辛かった。
登場人物が多く、時系列もぐちゃぐちゃなのでわかりにくいかと思いましたが、特にそんなこともなくラストまで駆け抜けるように観ることができました。
そしてどの役者もこれほどないというまで役にハマっていました。
今や主演級の俳優が揃っているのですが、それぞれの俳優のイメージに引っ張られず、本当に周りの友人なのかと思ってしまうほどの演技力。全体的に素晴らしかったです。
特に印象的だったのは今でも親交が深いというあまちゃんコンビ。
橋本愛さんは一つ一つの表情で全く違う印象を受けました。
前田がかすみに映画館で会って久しぶりに話したシーン。
辛い日常から解放された休日のような気がして、救いだった。。。のに、実は…
松岡茉優さんは今まで色んな役を見させていただきましたが、本作は本当に嫌いになりそうでした。
特にあのキスシーン。胸糞悪すぎて泣きそうでした。
そして皆が集まるべくして集まった屋上でのクライマックス。
ゾンビが屋上に集まった人たちを喰い尽くす姿は、まるでイキイキした人間が何かに縛られてた屍人を喰い尽くすよう。
今までの不穏な空気が一気に澄み渡る。見えない壁の崩壊と映画愛に溢れた最高なシーン。何度観ても涙が出ます。
全体を通して日常が平坦に過ぎていく。
しかし、彼らの感情の波は乱高下。
仲良さそうで実は無関心だったり、そぶりは見せないけれど、実はあの人のことを想っていたり。
学校の、そして人間の良い部分と嫌な部分滲み出ているようなそんな映画でした。