少年は残酷な弓を射る 劇場公開日 2012年6月30日
解説 「ボクと空と麦畑」「モーヴァン」のリン・ラムジー監督が、強い悪意と執着心を抱く息子とその母親の関係を緊張感たっぷりに描いた人間ドラマ。自由奔放に生きてきた作家のエバは子どもを授かったことでキャリアを捨て、母親として生きる道を選ぶ。生まれた息子はケビンと名づけられるが、幼い頃からエバに懐くことはなく、反抗を繰り返していく。やがて美しい少年へと成長したケビンは反抗心をますます強めていき、それがある事件の引き金となる。「フィクサー」のティルダ・スウィントンが主演。
2011年製作/112分/PG12/イギリス 原題:We Need to Talk About Kevin 配給:クロックワークス
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2022年4月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
Tスウィントンさん、Eミラーくん、子役の男の子、三人とも素晴らしい演技だった。 現状と過去のエピソードが交互に展開されて、何かが起きる、怖いことが…と観ているこちらの緊迫感が高まっていく演出も効果的だった。 弓を構えるエズラ君の姿がギリシア神話の絵画のようだった。本作で注目を集めたのも頷ける。美し過ぎて嫉妬や嫌がらせなど受けていそうだけど、どうか自分を大切に、ずっと頑張って欲しいと思った。
2021年5月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
原作は 2003 年に英国で出版された小説 “We Need to Talk About Kevin” で、2011 年に公開された英国映画の原題も小説と同じであるが、この邦題を付けた奴は無神経にも程があると思う。最近の洋画はハリウッド製ばかりになってしまい、サービス満点のエンターテインメントに徹した作りに観客も慣れてしまったため、時系列を並べ替えて事件の進行を敢えて分かりにくくしたこの映画の進行は、非常に異質に感じられた。 世界を巡る冒険家として生きて来た女性が、妊娠出産を境に一家の主婦として生きて行こうとするのだが、生まれた長男は異常に母親を嫌い、3歳まで喋るのを拒否し、6歳までオムツを履き続けるという成長過程を見せる。母親の旅の記録などは憎悪の対象であり、悪戯を装って徹底的に破壊するところなど、その執拗さは見る者に異常としか見えず、何故なのだろうと疑問を持ち続けることを強いられる。 色へのこだわりの強さは映画の冒頭から感じられる。レースのカーテンの白、トマトの赤、嫌がらせのペンキの赤、車の黄色、本の背表紙のダークブラウンなど、それぞれ意味を感じさせる。主人公や子供たちの服装なども意味が込められているのだろう。それに対して夫の服装にはあまりメッセージ性が感じられなかった。この夫は何を職業にしていたのだろうか。かなりの高収入だったようだが。 時系列の変化は、主人公の髪の長さで示してあった。現在の暮らしの中で、何故彼女が住民からあのような最悪の対応を受けるのか、その原因は最後になってやっと明かされるのだが、国民性の違いというのだろうか、日本人なら遠くから冷たい目線を送る程度で済ませるような気がするのに、やはり肉食の民族は意志の発現に遠慮がないのだと思わせられた。 最も印象的なシーンは、妹の怪我の直後にケヴィンがライチーを食べるシーンである。あまりに生々しすぎる比喩であり、この少年の不気味さと底知れぬ悪意の大きさにゾッとさせられた。彼が家族に対して持っている価値観の実体が察せられるようでもあり、のちのシーンを予感させるものでもあったと思う。少年は自分のストレスを発散させることにしか思いが至っておらず、被害者やその周囲の人々の思いを全く考慮していない。幼稚の極みという他はない。 最後まで、彼の行動原理は不明のままのようにも思えるのだが、唯一、風邪をひいたときに、父親を遠ざけて母親に甘える姿は本当だったのではないかと思う。一時的なものだったということも描かれているが、これをヒントと考えれば、彼の行動の原因は、母親から注がれた愛情に不満を持っていたということなのだろうと思う。彼が誰を生き残らせたのかを考えれば、単なる復讐といったものでなかったのは明らかではあるまいか。素直に母親に可愛がられる妹も、自分のストレスを何も察しない父親も、彼には憎悪の対象でしかなかったに違いない。 家族の関係が泥沼化してしまうと解決には長い時間と尋常でない努力を要するというのは、多くの文学作品が示している通りである。残された家族はこの後どのような人生を歩むのかとか、彼が自分のしでかしたことに真剣に向き合った時に、彼は耐えられるのだろうかとか、たとえ彼が更正したとしても、被害者には何の意味もないのではないだろうかとか、止めどない思いがグルグルと頭を駆け巡った。原因の描き方が明確でないのは、観客に自分で考えろという態度なのだろう。とにかく尾を引く映画であった。アメリカではまずウケないだろうと思うが、イーストウッド監督作に通じる作風のような気もした。 (映像5+脚本4+役者5+音楽3+演出5)×4= 88 点
2021年3月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
いろんなところで出てくる印象的な赤色、何の象徴なのか 母は無条件に我が子を愛せるものではない、それも本当だと思わせられます 育児は大変でも懐いて頼ってくれるから愛せるのではないでしょうか ただ大変なだけでは自分が失ったものがただの犠牲にしか感じられず、それが子供に伝わるのかもしれません 赤ちゃんの時に「寝付いたばかりだから起こさないで」という妻の言葉を無視した夫、あのシーンで無責任な育児しかできてない夫だとわかります そんな状態だから義務の育児になって、それが子供に伝わり、愛されてない孤独感の積み重ねからあんな事件が起きたのではないと思いました 人間は孤独だと、それが周りへの憎悪に繋がるのかもと思います 普通の親子になろうとしてる、でもそれは義務感としてという母のティルダ・スウィントンの演技も素晴らしかったです そして残酷な少年のエズラ・ミラーが美しかったです これはエズラ・ミラーだから成立してる作品のように思いました
2020年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
母親と息子の愛憎劇 私には合いませんでした。 自らのお腹を痛めて産んだ我が子。愛し、守らなければならない息子からのプレッシャーに苛まれる主人公。 息子の不気味さ、主人の無理解。母親として逃げられない閉塞感が良く描かれていて、鑑賞者の私も息苦しさ感じてしまいます。 普段は苦手の過去と現在を交互に映しだす手法も、主人公の髪型や息子の成長を映すことで、見難さを解消。効果的に使われていたと思います。 つまり、映画としての完成度は高いように感じられるのですが・・・映画としては、純粋に面白さを感じません。 ただ、ひたすらに息苦しさを感じるだけの2時間弱で、私の中では拷問のような2時間弱でした。 当然のように私的評価はかなり低めです。
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