劇場公開日 2012年6月30日

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少年は残酷な弓を射る : 映画評論・批評

2012年6月19日更新

2012年6月30日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

カタストロフが訪れたあとも人生は続く

破局のあとも人生は続く。

たとえば無差別狙撃犯が警官に射殺される。たとえば殺人の謎が解かれ犯人がつかまる。映画ならそこでエンドマークが出て物語は終わりだ。だが人生にエンドマークはない。カタストロフが訪れたあとも人生は続く。

エバ(ティルダ・スウィントン)は郊外の荒れ果てた一軒家に住んでいる。能力もキャリアもありながら、なぜかただのアルバイトのタイプ打ちの身分に甘んじて、職場でも友人を作ろうとしない。世捨て人のような暮らしを続ける理由は、映画が進むうちに徐々にあきらかになってくる。彼女が生きているのは破局の後の人生なのである。彼女の回想の中で、映画はじりじりとゼロ・アワー、すべてが終わった破局に向かって進んでいく。これは凡百の映画が終わったところからはじまる映画なのだ。

原題はWe Need to Talk about Kevinという。「ケビンのこと、ちゃんと話しあわなくちゃ」。だが、エバはどうしてもケビンのことを夫と話しあえなかった。それゆえ、エバは自分を罰せずにはいられないのだ。自分がなんらかの手を打っていれば、あるいはこんな結末は迎えずに済んだのかもしれない。エバが生きているのは永遠に続く煉獄である。だが、エバの答えの出ない苦悩と、ケビン(エズラ・ミラー)のどこまでも澄んで、なんの感情も湛えていない瞳とがついに向かい合うとき、あるいはそこにも救いはあるのかもしれない。

(柳下毅一郎)

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